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2000年2月10日(木)

◆午前7時半頃、3万アクセスを達成しました。カウンター・リセット後163日
で到達できました。当初は1日に160程度のアクセスでしたが、プレMYSCON以降
200に伸び、以降はほぼその数字で推移しております。3万のキリ番は殿堂にも
登録させて頂きましたが、「ともりょう」さんでした。ありがとうございました。
◆というわけで、3万アクセス記念企画として「自宅オフ」を企画致しました。
10時間ぶっ通しでご参加頂いても結構ですし、本だけ見たら帰っちゃうんだ
もんね、という短時間型参加でも結構です。この日記を書いている11日未明
段階で、6名の方からお申し込みを頂いております(今のところ、申し込み者
全員が先日の小林文庫10万オフのメンバーであります。うひゃあ)今回は、
「エラリークイーンミステリー」「バークにまかせろ!」といったレトロなテレビ
番組他の視聴も行います。お申し込みをお待ちしております。
◆年休をとって、のどかな1日を過ごす。朝方に早見網元の書き込みで、自分が
とんでもない勘違いをしていた事に気がつき、またしても本の山を引っ掻き回す
羽目になる。背表紙の色を記憶違いしていた事で目の前にある本が見えず、1時間半
にわたって本と格闘。その過程で「紙魚の手帖」をもう1部発見できたのが、せめて
もの救いか。とほほ。
◆11日、12日とイベントにつき部屋の片付け。古本探索は、買い出し方々船橋の
ブックオフを覗く程度。
「幻の馬」ボワロー&ナルスジャック(偕成社)100円
「うしなわれた過去」ボワロー&ナルスジャック(偕成社)100円
「ギヤマン壷の謎」はやみねかおる(講談社青い鳥文庫)100円
早速、話題のボワナロのジュヴィナイルをゲット。少年探偵サン・ドゥシリーズの
1巻と3巻。うう、2巻が欲しいよう。

◆「夏街道」早見裕司(アニメージュ文庫)読了
ご存知早見網元のデビュー作。水淵季里という「力」の保有者を巡るシリーズの
第1作でもある。お恥ずかしい話であるが、なんと私は第2作の「水路の夢」を
第1作であると勘違いして読んでしまい「随分と、キャラの紹介があっさりした
話だなあ」と思っていた。そりゃそうだわ。済みません、網元。
この作品は、時をおいて失踪する二人の青年の謎を追う、正統派の学園ものにして
正統派のゴースト・ストーリー。BGMにNHKスペシャル系(喜太郎、姫神、
富田勲、久石譲、カール・ジェンキンス)の曲でも流れていそうな静かなドラマで
ある。おそらくは少女漫画の世界にしか存在しないであろう透明な学園生活に、
魔が忍び寄る。鏡の向こうの異界から、力を求めて「扉」を開こうとするもの。
亡姉の婚約者の元に身を寄せる少女・季里が、鏡の中に見た青年友樹は、「謎の失踪」
から帰還してバンドのペアにして思い人である湘子の前に現れる。そして、彼等の
ライブのさなかに最初の異変は起きる。時間が凍り、空間は歪みを生じ、あちらから
魔の誘いが「夏街道」という失われた調べとともに始まる、、、
どこか精巧なガラス細工を思わせる硬質な危うさを備えた青春ホラー。異能者
を取り巻くレギュラー陣の「やさしさ」が心地よい。季里のおかれた境遇など
もしっかり描かれており、デビュー作としての気負いは感じるものの、読ませる
話になっている。ただ、先に読んでしまった第2作でも感じた事ではあるが、
季里の「力」の正体が定かではないので、その意味において「ゲーム」にならない。
あと、主人公が季里と湘子の二人に裂かれてしまっており、読者として何を追えば
よいのかが分からなくなる。多彩なキャラクターに惑わされず「場」や「時」が
主人公なのだ、と割り切るのだろうか?人生の若い時期に出会っておけば、また
感触は異なったかもしれない。なお、川原由美子のイラストは素晴らしい。見開き
のカラーやカバーイラストの美しさときたらもう貴方!うーん、自分の作品に
川原由美子の絵をつけてもらえるってえのはカイカンだろうなあ。


2000年2月9日(水)

◆昨日のリストアップ漏れ。成田さんからの賜り物。
「無敵五人男」三橋一夫(春陽文庫)
ありがとうございますありがとうございますありがとうございます。
うーん、渋い表紙だあ。春陽文庫三橋一夫クエスト4冊目!!ふう、蝸牛の歩み。
ところでこれは推理小説なのでしょうか?(貰ってから聞くな!!)
◆新橋チャリティー市を再度点検。おお、昨日より少し本が増えているぞ!!
こんなところを拾う。
「ブラウン神父ブック」井上ひさし編(春秋社:帯)300円
「血の権利」Mフィリップス(早川書房)300円
「出雲の神の娘」霜島ケイ(勁文社NV)100円
d「失踪」高木彬光(講談社ロマンブック:初版)100円
d「恐怖の大空」中島河太郎編(KKワールドフォトプレス)100円
やた!「ブラウン神父ブック」に巡り合ったぞ!!二刷りではあるものの帯の
「チェスタトン没後50年記念」の文字が嬉しい。うーん、この本が出ていた事
を知ったのはつい最近。存在を知った時は、物凄いショックだったのだが、安価
で無事ゲットできてラッキーであります。ロマンブックスの高木彬光作品もあまり
みかけないので嬉しい。フクさんの所の野球ミステリ・リストアップに参加しよう
とした作品なのだが、所持している全集版が棚上・平積みの底辺部にあったので
内容確認する気力を失って断念した作品(未読)。こうして梗概を読むと一応野球
ミステリのようですな。
◆おまけで門前仲町定点観測。
「文豪ナンセンス小説選」夏目漱石他(河出文庫:帯)200円
「探偵小説の謎」江戸川乱歩(教養文庫)150円
「暗号と推理小説」長田順行(教養文庫)200円
「トリック専科」松田道弘(教養文庫)200円
河出の1冊が嬉しいところ。ミステリではないが、例のご当地&テーマミステリ・
アンソロジーと並べておきたい一冊。教養文庫は他にもあったが、未所持のみ
押さえる。うーむ、我ながら真っ当だあ。
◆あ、銀河通信さんからリンクを張ってもらっている。うう、早くバック・リンク
せねば。んー「星の鉄人」かあ?「『果てしなく広がる大宇宙。生まれてくる星も
あれば、滅び行く星もある。』そして、星は夜輝く。<眠らんママさん>こと安田
ママと<通常の書痴の3倍の知識を誇る赤い彗星>ダイジマン、強力二連星を
擁するサイトこそここ『銀河通信』!!」てなこと書いてるうちにさっさと更新
せんかい!取り急ぎ、ありがとうございまーす。
◆「死神のいる街角」中井紀夫(出版芸術社)読了
<能なしワニ>や<タルカス伝>などの大河SFをものにする一方で「世にも奇妙な
物語」のノベライズもこなす器用な中堅SF作家のホラー短編集。田中文雄と並んで
圧倒的なリーダビリティーと手堅い筆致で、私にとって「安心して読める」作家の一人
である。あまりに器用すぎて「無印良品」というイメージもあるのだが、職人
とはそういうものなのかもしれない。この作品集も、様々な恐怖のアラカルト、
どこから読んでも、お楽しみいただけます。以下、ミニコメ。
「葬式」短い作品にミスディレクションを配した心意気が立派。恐怖の仕掛は
目新しいものではないが、一ひねりしていて納得性が高い。
「元気でやってるかな」一発芸。想像通りの展開とオチ。この中では凡作。
「怪我」発想も、視覚的にショッキングな恐怖シーンもお見事。夫婦の情愛も
しっかり描けており小説として完璧。傑作。
「寝ぐせの男」艶笑もの。のどかなストーリー。情景を想像するだけで可笑しい。
「うそのバス」日常の不思議系の一編。若干拍子抜けの感もあるが、ラストの
余韻が心地よい。
「車刑」これも一発ネタ。もっとねちねち書き込んでもよかったかも。友成純一
にやって欲しい話ではある。
「挽肉の味」恐怖の底が深い。細やかな情愛が腐臭を放ち始める過程が怖いところ
へ、説明を行わないラストが読者を戦慄させる。小説というメディアならではの佳作。
「やめられない楽しみ」うーん。ザッピング小説なのだが、少々読み通すには根性
が必要。まあ、このオチしかあるまい、と思っていたら、そこにオチた。
「鮫」これは堂々たるSF。不条理が日常に消化されていく過程がなんといっても
恐怖心をそそる。ただラストは一種のリドル・ストーリーなので、少々不満が残る。
「獣がいる」文句なしに最長最良の作品なのだが、残念ながら再読であった。それ
でも、展開といい文体といいキャラクターといい、競作集にかけた作者の気迫が
伝わってくる名作。ゆっくりとした導入部から、そろうりと恐怖が実体化していく
中盤、一転して派手な演出を施されたカタストロフ、そして静かなどんでん返し。
上手い!!


2000年2月8日(火)

◆皆さん「こんな事をやっていてはだめだ!だめなのだ!」と頭で分かっているのに
それが止められないというご経験はなかろうか?
私はある。
昨晩やってしまった。
昨晩というか、ほんの数時間前である(今、9日の朝である)。
銀河通信さんの掲示板を眺めているうちに、ふと「私は<紙魚の手帖>を何冊
持っているのだろうか?」という疑問に取り憑かれてしまったのだ!!
帯を筆頭に、あまり「紙屑系」の趣味のない私にとっては勿論<紙魚の手帖>も
興味の対象外だった。かつてZPで話題になっていた時も「ほう、あんなもので
何を騒いでいるのじゃ?」と冷ややかに傍観していた。
しかし、一旦気になりだすと、とことん気になるのが、因果な性格である。
結局、所持している創元推理文庫を殆ど引っ張り出して<紙魚の手帖>を捜す
という「平日の夜には向かない作業」に突入してしまったのだあ!!
おまけに、当家では創元推理文庫は冷遇されており、一応おおまかにブロック別
になっているとは言え、バラバラに書棚のあちこちに突っ込まれているのである。
その結果、「書棚の前に平積みになった山をどかす」「横向きに突っ込んでいる
本をどかせる」「前に並べている本をどかせる」という手順を踏まなければ創元
推理文庫には到達できないのである。
それを、やってしまった。
アホである。
あたりは散らかり放題。しかも持っている筈の本がでてこない。その本を求めて
<紙魚の手帖>そっちのけの探索が始まる。あああ。
もう一度言う。アホである。
何部みつかったかだけご報告しておく。全41部中、たったの22部しかみつから
なかった。それに何時間かかったかは聞かないで欲しい。武士の情である。
ただひたすら眠いのである。
今日、掲示板にレス付けができないのは、そんなわけなのだ。
◆新橋、京橋定点観測
ふと、そんな気がして新橋経由で帰ると、ビンゴ!やってましたチャリティー市。
しかしなぜか今回は普段に比べて古本が少ない。通常なら古本を置くべき場所に
ネクタイを並べたりしている。うーむ。それでも、2冊だけ拾う。
「ホステス殺人事件」西東登(青樹社)100円
「ザ・ドライバー」CBフィリップス(日本ヘラルド映画出版局)100円
なかなか渋めなところが入って御満悦。よし!京橋も覗きにいくもんねと銀座線
に乗って八重洲古書センター、金井書店を強襲。センターでは空振りだったが
金井書店で当たり!
「気まぐれ指数」星新一(新潮社:初版)100円
「フランス怪奇小説集」長島良三編(偕成社)100円
d「メド・シップ惑星封鎖命令!」Mラインスター(早川文庫SF)100円
d「罪灯」佐々木丸美(講談社:初版)100円
「化けてでてやる」山内照子編(新風舎:帯)1200円
d「並木通りの男」Fダール(読売新聞社)400円
d「チューインガムとスパゲッティ」Cエクスブライヤ(読売新聞社)400円
d「メグレと死体刑事」Gシムノン(読売新聞社)400円
d「蝮のような女」Fダール(読売新聞社)400円
d「死のランデブー」Pボアロー(読売新聞社)400円
d「パリを見て死ね!」Fリッツ(読売新聞社)400円
読売新聞社の「フランス長篇ミステリ傑作集」が揃いで並んでいるなんて何年ぶりに
目にすることやら。帯はないが、金井書店らしい美本で満足。これは出来れば
ばらしたくない。で、キバヤシさーん、この揃いにさあ、「ザ・サバイバル」と
「トロヤの黄金」と「とっぴ・トッピング」(帯)つけるから、ダブリ本リスト
勘弁してもらえないかなあ?(私信)
佐々木丸美は安田ママさん用に確保。ヤフーオークションに出せば本当に2万円
つくのかな?MYSCONの時にでも手渡し致しますね>ママさん(私信)
「化けてでてやる」は自費出版にしては珍しくも渋いゴーストストーリーの翻訳
アンソロジー。出ていると小耳には挟んでいたが、うーん、こりゃ嬉しい。
星新一も何故か今日に至るまで購入していなかった第一長篇。昭和38年の初版
が100円なら買いでしょう。というわけで、本日は「血風」宣言。

◆「死体は沈黙しない」Cエアード(早川ミステリ文庫)
最近「そして死の鐘が鳴る」が、有栖川効果で見直されている英国女流作家の
日本紹介第2作。本国では第8作に当たる。エアードはこの後処女作の「聖女が
死んだ」が紹介されたものの、こちらではそれきりになってしまった。既に3作とも
絶版状態で、Jフレーザーなどと並び「通好み」の英国ヴィレッジ・フーダニットは
ことほど左様に我が国では不遇である。マーサ・グライムズの如き米国製の「まがい
もの」の紹介は着々と進んでいるのに、本家本元が冷や飯を食わされるというのは
なんともやりきれない。
平凡な物理の女教師が糖尿病を拗らせて死ぬ。しかし彼女は25万ポンドという
巨額の遺産を口座に残していた。ひょんな事からその事実がうっかり者の署長の
耳に入ったから堪らない。彼女の遺体は、スローンが身重の愛妻とともに検診に
通っている病院で検死される事となる。彼女の遺産を相続するのは、姪と二人の甥、
そして主治医であった。果して彼女は何らかの手段で殺害されたのであろうか?
しかし、検死の結果、一切の毒や外傷は発見されなかった。これで「事件」は
終わりかと思われたところに、死の直前、彼女の飼い犬が行方不明になっていた
という情報がもたらされ、更にその犬が喉を裂かれて殺されていた事が判明する。
何者かの悪意を感じたスローンは、関係者に聞き込みを続けるのであった。やがて
捜査の焦点は、遺産の半分を相続する行方不明の「甥」捜しに絞られるのだが、、、
良質のユーモア・ヴィレッジ・フーダニット。飄々としたスローン警部のキャラクター
が印象に残る佳作。犯人や動機の隠し方が巧みであり、その点でクリスティに一脈
通じるところがある。前作を読んだのがもう十数年前なので、人物関係などは
忘却の彼方なのだが、どうやら「粗忽な署長」という設定が事件でないものを
事件にしてしまう、というパターンがあるらしい。そういう意味では犯人には
同情を禁じ得ない。但し、この犯人は頭が良いようでどこか根本的なところが
抜けており、そこを突き詰めていくとプロットに綻びが出てくるかもしれない。
「そして死の鐘が鳴る」でも感じた事だが、どこかちょっと「変」なところが
エアードの持ち味なのであろうか?捜して読む程ではないかもしれないが、英国
ものがお好きな方はどうぞ。


2000年2月7日(月)

◆ようやく膳所さんに「ラブ・ストーリー」発送。川口文庫とアスキーに代金を
振込み。
◆宴会の日。なぜか20時には終了してしまい、南砂町定点観測へ。
d「黒い白鳥」鮎川哲也(角川文庫)190円
d「風の証言」鮎川哲也(角川文庫)170円
d「偽りの墳墓」鮎川哲也(角川文庫)150円
d「女はベッドで推理する」梶龍雄(サンケイ出版)100円
「グルーピー」フェビアン&バイアン(角川海外ベストセラー:帯)100円
d「シャボン玉ピストル大騒動」Pギャリコ(早川書房)100円
「復讐の狼」Jジョバンニ(早川NV文庫:帯)50円
鮎哲狩り。「偽りの墳墓」は嬉しいところ。しかしとんと角川の短編集にはお目に
かからなくなってしまった。うーん、ダブリ・ワンセット計画が意外に進まない。
「グルーピー」は通し番号5番。名前の書き込みがあるが、ビートルズの4人の
顔が並んだ帯が嬉しい。膳所さん、お入用ですか?
◆KIYOKA−CHANから「慄然の書」が帰ってくる。ビール券がついてくる。
むふふ、宴会の足しにしようっと。
◆掲示板の書き込みが2000件を突破。8月末から平均で1日12件の書き込み
があった勘定。これは結構なハイペースなのでは?うーん、凄いぞ、凄いぞ。
これも皆さんのお蔭です。どうもありがとうございます。

◆「アンパン的革命」菅浩江(アスペクト)読了
新刊書を送料までかけて買い求めるとは、古本系の風上にも置けない所業であるが、
なにせ、書店経由では「品切れ」を宣告される作品である。アスキーという「古書店」
から通販で買ったと思えば安いものだ。しかも状態は極美!加えて帯付きだぜ、帯付き!
(何か勘違いしている)
生っ粋の京女にして、華麗な作品世界で読者を魅了しつづける作者の第一エッセイ集。
「小説のイメージとの落差が大きい」という作者御自らの触れ込みにどきどきしながら、
ページを繰った。
あ、全然よろしいではないですか?というか、小説の後書きのイメージそのまま。
これはこれで私の内なる「菅浩江」像を傷つけるどころか、益々もって磨きをかける
好エッセイ集であった。掲載誌が求人誌だからなのか、作者自身の多彩な職歴が
奮っており、研究所勤めに、結婚式場のオルガン弾き、アニメショップの店員、
ゲーム・ミュージシャン、そして勿論、新進SF作家!オタキングな人達を従えた
オタクイーンぶりも堂に入っており、実に実に微笑ましい。小説の際の透明感と緊張感
溢れる文体も素晴らしいが、このエッセイのような話体の文章も達人の域で、感心。
常に読者を楽しませようという関西人の血はここでも健在である。そもそも関西人は、
我と我が身を捨てて笑いを取りに行く。それが関西人のDNAに組み込まれた体質
とはいえ、唯一「京女」だけは別だと思っていた。「ちゃいますねん。」
新婚家庭の乱雑ぶりから、言い間違い、のほほんとした日常と締切間際の修羅場、
豊満な肉体故の痴漢体験、などなど、笑いをとれるものは凡そ身内の恥に至るまで
すべて皿に盛ってさす出す心意気!よろしおますなあ。うんうん。
「関西人とは、その生まれをさすのではない。生き方そのものである」という事を
再確認させて頂いた。
また、お笑いのところどころに挿入される大人の女性の「矜持」や、阪急沿線で
青春を過ごした者としての同時代感覚も心地よい。定価分はしっかり楽しませて
頂きました。はい。


2000年2月6日(日)

◆前日の日記を書き終えたのが午後2時半。それにしても長い日記だねえ。
天気は今ひとつだったが、思い切って西千葉・稲毛定点観測にでかける。
「落涙の夢郷」霜島ケイ(勁文社NV)20円
「審判の日(上)」GRRマーティン編(創元SF文庫)20円
「ファンタズム」Dコレスカリー(二見書房サラ・プランタン)20円
「BOSSボス:シカゴ市長・Rデイリー」Mロイコ(平凡社)20円
「くるしまぎれにモーパッサン」泉英樹(出帆新社・Vカバ・帯)20円
d「退職刑事健在なり」都筑道夫(潮出版社:帯)80円
d「悪意銀行」都筑道夫(角川文庫)60円
d「本陣殺人事件」横溝正史(春陽文庫)70円
d「快盗ルパン」Mルブラン(角川文庫)70円
d「ルパンの告白」Mルブラン(角川文庫)70円
d「オルカンヌ城の謎」Mルブラン(角川文庫)80円
「夢の終わりに・・・」Jライマン(早川書房:帯)400円
「殺しのマニア」左古文男(徳間NV)100円
「スターシップ」ブラッドベリ他(新潮文庫)100円
d「海外版怪奇ファンタジー傑作選」武田武彦編(コバルト文庫)100円
「気分は活劇」北上二郎(徳間書店)100円
「羽根をなくした妖精」Yコッコ(晶文社)100円
「ダガーマン」RHフランシス(早川書房)200円
「消えた男」GCチェスブロ(パシフィカ)300円
「黒い霧の街」Mフリップス(早川書房:帯)500円
「宇宙生命襲来(上・下)」GRRマーティン編(創元SF文庫)各100円
「女スパイ悶絶」JMヤンカ(光文社CR文庫)200円
ルブランはやよいさんからの質問が未回答につき、とりあえず押さえる。「告白」
も「オルカンヌ城」も翻訳者は水谷準にあらず。よし、後は3冊確認だあ!
「悪意銀行」は所持本が桃源社版なので、文庫も押さえる。退職刑事は逆のパターン。
うーん、初版帯が80円だと買っちゃうよなあ。わたくし的には「ファンタズム」
が当たり。出ていた事も知らない本だよね。「スターシップ」は何故か縁のなかった
本。後の2冊には厭という程出会うのになあ。危ない危ない。
◆創元推理倶楽部秋田分科会の「新版横溝正史の世界」情報解禁!っていったって
ご関係者は皆さんご存知だよなあ。単行本未収録作3編が入って2400円を
高いと見るか、安いとみるか。
◆成田さんの3万アクセス記念で「無敵五人男」を頂戴できる由。
ありがとうございますありがとうございます。
むっふっふ、これで三橋一夫収集、一歩前進だあ。(それはともかく1冊ぐらい
読まなきゃなあ。)

◆「ホログラム街の女」FPウィルソン(早川文庫SF)読了
あの「キープ」のウィルソンである。その後も活きのいいアクション・ホラー
路線で来たかと思うと、医療サスペンスに転進。どんな凄いものになるのかと
思いきや只のロビン・クックの亜流であり、非常に落胆した。ロビン・クックを
やる奴なんざあ掃いて捨てるほどいるが、ポール・ウィルソンが出来るのはポール・
ウィルソンだけだと思うんだけどなあ。ジョン・ソールのごとき同工異曲の罠に
嵌まらず、一作毎に工夫を凝らす創作姿勢は非常に買うのだけれど。で、実はこの
作家がSFからスタートしたというのには、正直驚いた。これまでも作品リストは
見ている筈なのだが、全く記憶に残っていない。今更ながらに、過去のSF作品
が翻訳されるというのは大歓迎である。
3つの連作中編からなる未来ハードボイルド。離婚した私立探偵が、クローン
娼婦から婚約者捜しの依頼を受け、麻薬組織の女ボスと闘う羽目になる第1話。
主人公が分子ナイフで首を切断されるというショッキングな幕開きの第2話。
ここで、彼は一子制度の歪みが生んだ孤児捜しを行ううちに彼等の聖母と出会う。
相棒を務める孤児との友情が爽やかである。そして、第3話では、その「聖母」を
巡る、私立探偵と都市の最高権力者との「戦い」が描かれ、感動的なクライマックス
を迎えるのであった。第1話では、まさに卑しい街を行く人生の敗残者であった
主人公が、第3話ではシュプレヒコールに迎えられる英雄として復活を遂げると
いうのは、やや「やり過ぎ」の感もなくはないが、エンタテイメントはこれで
いいのだと思う。個人的には正統派私立探偵小説風の第1話が好みではあるが、
続く第2話の危機一髪ぶりも捨て難い。のっけから主人公が首を刎ねられる小説
なんて今までにあっただろうか?どこを切ってもB級ながら、面白さだけは保証
できる作品。元気のいい頃のポール・ウィルソンというだけで「買い」でしょう。


2000年2月5日(土)

◆長い一日は寝坊から始まった。ホームページを運営するようになって、ウィーク
デイの平均睡眠時間は3〜4時間に減った。土、日に帳尻あわせで惰眠をむさぼら
なければ、身体がもたない。先週の土日を合宿に奪われた結果、疲労は頂点に
達していた。目がさめると既に9時。ここでレス付けや日記を書いていては、また
午前中が潰れてしまう。ええい、今日は更新にも「お休み」を頂いてしまえ!と
「狩り」に出かけるべく家を出たところで、宅急便に出くわす。グッド・タイミング!!
川口文庫とアスキーの荷物到着。
「アンパン的革命」菅浩江(ASPECT:帯)1100円
おお!早い早い!白地に猫の絵をあしらったパステル調のカバーが素敵。勿論
帯付き、補充スリップまでついたピカピカの新刊である。これで、菅浩江的収集
は、残すところ「架空幻想都市(上)」のみである。作者御自らのサジェスション
でゲット出来たというところが嬉しいではないか。ありがとうござます。
川口文庫は以下の通り。
「フラミンゴの羽根」LVDポスト(思索社:帯)1000円
「五分間ハードボイルド」常盤新平編(日本文芸社)1500円
「痕跡」Cブリュックナー(潮文庫)1000円
「随筆 探偵小説」高木彬光(鱒書房)2000円
「探偵クラブ」S26年4月号(共栄社)1000円
「探偵クラブ」S26年8月号(共栄社)2000円
「探偵クラブ」S26年9月号(共栄社)2000円
「探偵クラブ」S26年11月号(共栄社)1500円
「探偵実話」S27年3月増刊号(世界社)1500円
「探偵実話」S27年11月(世界社)1500円
「EQインデックス」荻巣康紀編(私家版)1500円
「地下室46号〜100号:55冊揃い」(怪の会)15000円
「らんだの城通信創刊号〜20号:19冊」(神津恭介FC)10000円
「帝王5号」谷口俊彦編(私家版)3000円
「創元推理文庫SF全リスト」渡辺英樹編(私家版)1500円
本命の「ROM」が黒白さんのところに行ってしまったので、ちょいとがっかり
していたが、まずまずの戦果なのかな?「地下室」によしださんの手書き文字が
踊っているのが楽しい。「EQインデックス」はもっと早めに荻巣さんに頼んで
おけばよかったとも思うが、まあゲットでハッピー。「らんだの城通信」「随筆
探偵小説」と高木彬光的収穫があったのは、嬉しいところ。でももう一つの本命
であった「横溝正史追悼集」は、いずこに嫁がれたのでしょうか?嗚呼。
◆「めでたさも中くらいなり」で高田馬場へ。ビッグ・ボックス定例市の2日目。
「ま、何もないよなあ」と覗いて回るが、気がつくと結構掴んでいた。
「有馬頼義推理全集2:夜の配役」(東方出版社)500円
「有馬頼義推理全集3:殺意の構成」(東方出版社)500円
d「ギデオン警視と部下たち」JJマリック(ポケミス:背痛み)200円
d「ギデオン警視と暗殺者」JJマリック(ポケミス:背痛み)200円
d「ギデオンと放火魔」JJマリック(ポケミス)200円
「海底二万哩」Jヴェルヌ(早川ポケットブック)200円
d「メグレと幽霊」Gシムノン(河出書房)200円
d「メグレと賭博師の死」Gシムノン(河出書房:帯)200円
d「浪子のハンカチ」戸板康二(河出文庫)200円
「ベイ・シティ・ブルース」Rチャンドラー(河出書房新社:帯)700円
「罪ある傍観者」Wミラー(河出書房新社:帯)700円
「国文学:江戸川乱歩と夢野久作」H3年3月号(学燈社)700円
「国文学:解釈と鑑賞:江戸川乱歩の魅力」H6年12月号(学燈社)700円
有馬頼義は、安かったので押さえに走る。しかし全5冊、道は遠いぞ冥府魔道ぞ。
河出のハードボイルドシリーズは、「欲しい本だけ買うんだもんね」とレイシイ
あたりしか買っていなかったが、結局全部買う羽目になるんだよ。いつになったら
自分の事がわかるのだ、こやつは?とりあえず完集。
ギデオンは「2日目に残っているのには、理由があります」といった状態。蔵書と
カラープリンター使って補修してやろうかな。むっふっふ。いずれにしても200円
ならお買い得でしょう。
◆ブックオフ2軒と早稲田古書街を撫でがてら若干冊拾う。
「モンスタープロジェクト発動中!」霜島ケイ(白泉社)100円
「モンスタープロジェクト発動中!2」霜島ケイ(白泉社)100円
「盗まれた東京」光瀬龍(三省堂)500円
「死者と影」Pゴズリング(ポケミス:帯)800円
d「ビヨンド・ザ・ビヨンド」牧野修(ログアウト冒険文庫)100円
「銀の森の少年」Rフォード(新潮社:帯)100円
「The Dead Astronaut」バラード他(Playboy Books)100円
「The Phoenix and the Mirror」Aデヴィッドソン(Ace Books)100円
ゴズリングのピカピカの新刊が2冊並んで古本落ちしていた。まだ書店でも見て
いないのに!買わずにはいられない。先日もペーパーバックを買い込んだ古書店
で、また少々お買い物。先日はなかったデヴィッドソンが出ていたのでゲット。
一体あとどれくらいストックに入っているのだろうか?ちっとも減った感じが
しないぞ。
◆昼飯をすませて、さて大久保方面か、池袋方面かで思案。夜に来客がある予定
なので、どちらか一方しか見てまわる余裕がない。まあ、大久保は、先日日下さん
が問答無用の大血風だったので、んじゃま、池袋にしますかねとバスで移動。
随分と久しぶりに光芳書店や八勝堂を見て回る。光芳書店には南池袋にも新店舗
が出来ていて驚く。なかなかの品揃え。東武の芸術劇場の裏手に「古本大学」なる
店を発見するもここはペケ。何か勘違いしたとしか思えない値段が踊る。森英俊氏
があらかた浚えてた筈の八勝堂で1冊大当たり。池袋の釣果は以下の通り。
d「殺人歌劇<第一幕>」鮎川哲也(青樹社)260円
d「翳ある墓標」鮎川哲也(立風書房)260円
「死神のいる街角」中井紀夫(出版芸術社:帯)200円
d「金蝿」Eクリスピン(ポケミス:帯)200円
d「鬼女の都」菅浩江(祥伝社:帯)600円
「推理小説の歴史」Fホヴェイダ(東京創元社:裸本)500円
「トム・ソーヤーの空中旅行」Mトウェーン(岩崎書店:函)500円
「まぬけウィルソンの活躍」Mトウェーン(岩崎書店:函)500円
「宝さがしの子どもたち」Eネスビット(福音館書店:函)500円
「鬼女の都」は例によって布教用。もう一冊帯なしがあったのだが、さすがに
重量オーバー。こんなところで童話を買うからだよ。
さて、八勝堂での当たりはこれ!
「多元世界の門」Rシルバーバーグ(立風書房)800円
立風の海外SF&ファンタジーは本当に見かけない。この本も初見。他で読める
のかどうかもしらんが、とにかく脊椎反射で買い込む。ふっふっふ、森さんの
フィールド外だもんね。
◆帰宅して来客に備える。なにせ朝起きたままの状態。2週間分の買い込み本が
居間に散乱している。ひいこら整理するのに2時間以上。22時前には来客が到着。
「銀河通信」の安田ママさんとダイジマンさんのお二方が再降臨。
焼き芋をデザートワインを流し込みながら歓談。ダイジマンさんから、先日の東急
東横古書展でゲットした創元の古いカタログや、柴野御大から直々に譲り受けた
というチラシなどをみせてもらう。うーむ、この人はホンマもんの書痴だす。なぜ
か持っていないというハヤカワ文庫カタログの95年1月号を御進呈すると、そりゃ
もう、喜ぶことったら、アナタ。安田ママさんは鼻水花子状態ながら佐々木丸美を抱え
て御満悦の模様。早く風邪直しなさいね。ママさんからは早めのヴァレンタインを頂戴
する。うひょひょ。ダイジマンさんからは以下の本を頂く。
「虚構船団」筒井康隆(新潮社:函:サイン本)贈呈
本国版「EQMM」1947年1月号(38号):贈呈
EQMMは東京泰文社の最末期に購入したものらしい。ページを開くと「3.7.
1947 江戸川先生より」とある。うーむ、こりゃあ誰の蔵書だ?中身もロースン、
ハメット、ヴッカーズ、クイーン、パーマー他なんたる豪華メンバー。「この
書き込みがポイント」とのたまうダイジマン氏。うーん、書痴。
その他の話題は、例の早稲田古書街のSFペーパーバックの出所とか(なんで
そんな事を知っている?!)、出版芸術社の星新一の拾遺集とか(「絶対、日下さん
の仕事だよねえ」とお噂)、「川口文庫は安い」とか、「創元推理文庫版の『殺人
交差点』は、何故忽ちのうちに絶版になったのか?」とか、あっという間の2時間弱。

「終電があるうちに」と、お二方は引き上げ。長い1日は夜更かしで終わる。
これが休日だ!!

◆「鈍い球音」天藤真(青樹社)読了
フクさんところの掲示板でこの作品をきっかけに「野球ミステリ」話が盛り上がって
いるのに刺激を受けて手にとった天藤真の読み残し長篇の一つ。実は、まだ天藤真
には他にも読み残し長篇がある。それが「大誘拐」だったりする。一体、お前は何なのだ!?
と糾弾を受けそうだが、読んでないものはしようがない。天藤真で最初に読んだのは
幻影城ノベルズの「炎の背景」。以降比較的まじめに読んできた作家である。
「大誘拐」だって、カイガイ出版の初版帯を新刊で買っている。そういえば「陽気な
容疑者たち」を除けば初刊行時の初版が揃っているぞ。エッヘン。「大誘拐」は
ちょっと後回しにしておいたところ、物凄い評判を呼んで映画にまでなってしまい、
とりあえずいつでも本屋に並んでいる状態だったので「いまさら」感が強かったのだ。
では、なぜこの最良の野球ミステリと噂される「鈍い球音」は未読で来たのか?
これにも理由がある。
「実は、私は野球ミステリが嫌いだったのだ。」
身も蓋もない話なのだが、とにかくダメだったのだ。一重に現実世界の野球に思い
入れがありすぎたのであろう。漫画では許せる事がミステリでは許せないのである。
架空の球団名が出てきたりすると虫酸が走る。愛称なんぞは更に最悪である。
「ジャガーズ」とか「イーグルス」というだけでパス。またアンチ巨人につき
巨人が格好良く書かれていると問題外。そんな自分の野球ミステリ・アレルギー
が消えている事に気づいたのが「スタジアム虹の事件簿」であった。首都圏に十数年
住んでいるために阪神情報に触れずに済むというのもよかったのかもしれない。
かくして、今回ようやくこの作品に辿り着いた次第。
日本シリーズ開幕直前、就任1年目で万年お荷物チームの「東京」をリーグ優勝に
導いた名将:桂監督が、不可能状況の下で衆人環視の東京タワーから、帽子と自慢
の口髭を残して失踪する。監督の愛弟子である立花コーチは、友人の新聞記者矢田貝
にその捜索を頼み込む。友人の窮地に記事を押さえ、社内説得に成功した矢田貝は
3人の部下を与えられる。一方、日本シリーズは監督不在のままに開幕。「東京」
は、「大阪」の気迫の前になすすべなく負けを重ねていく。発見されては、再び
姿をくらます桂監督。そして竹山代理監督までが、連敗の後、衣服を残して消え
失せてしまう。遂にチームの命運は、立花の采配に委ねられたのだ!
果して、監督たちの失踪は、野球賭博界の陰謀なのか、それとも?
完全無欠の「野球ミステリ」。まず、野球をよく知っている。球団経営から実際の
プレーは勿論、野球を取り巻くマスコミから裏社会まで、よくぞここまで生き生きと
描けたものだと感心する。更に、何重にも仕掛けられた逆転劇。東京タワーからの
人間消失という派手な大技以外にも、メイン・プロットが一筋縄ではいかない。
企みと陰謀が絡まりあうところへ、探偵チーム自身が事件を複雑にする手立てを
講じたりする。それがラストに至り、一つの解に収斂していく快感は、まぎれも
なく良質の本格推理小説にのみ許されたものである。この物語は実に「壮大」で
ある。キャラクターとしては監督の娘である「ふうちゃん」が強烈に印象に残るが、
今の時代からすると少々セクハラかもしれない。文句無しの傑作推理。我々は、
この作品が書店で買える幸せを噛み締めなければならない。


2000年2月4日(金)

◆ご接待の日。私以外の2人が浮き足立っているので、現地集合が危なっかしく
て、得意の神保町タッチ&ゴーを封じられる。むむむ。
とりあえず、宴会無事終了後、船橋で閉店間際のブックオフへ。
なんにもないよね、そりゃあ。
「89パーセント大作戦(上・下)」Dターマン(講談社文庫)各100円
d「時の過ぎゆくままに」小泉喜美子(講談社文庫)100円
「89パーセント」は黒背につき、押さえる。このあたりが黒背の最後だった
ように思うのだが、、
収穫はないものの、明日、明後日と久しぶりのお休みにつき、足取りは軽い。

◆「刑事ぶたぶた」矢崎存美(広済堂出版)読了
葉山人型記憶兵器、よしだ血風仮面、早見網元など、私が一目も二目も置く練達の
本読み達がこぞって大絶賛。これは、たとえ新刊であっても手に取らざるを得ない。
購入時にこのうえなくこっぱずかしい思いまでして入手した話題作!さて、いか程
のものか?一見、ゴランツのそっけないイエローDWを思わせる装丁に「刑事
ぶたぶた」(うひゃあ!)という題名が記されているのみ。しかし!そのカバー
を剥ぐとそこには、おお!!ぶたのぬいぐるみが、街路に、地下鉄に、とんかつ屋に
ちょこんと置かれたモノクロ写真のコラージュが!!!
「か、可愛い・・・」
これで、「お前は既に作者の術中に落ちている。」「ひでぶ!!」ぶたぶた!!
えー、こんな話。
念願の刑事に昇格した立川英晃は、希望に胸をふくらませ所轄の春日署に向かう。
が、そこで彼がチームを組む事になった先輩刑事こそ、潜入捜査の達人にして
落しの名人「山崎ぶたぶた」その人、いや、そのブタであった!あまりといえば
あまりの展開に愕然とする立川。しかし、事件は彼等を待ってはくれない。銀行
強盗事件に、迷子の犬とダイヤ窃盗事件、ぬいぐるみへの針仕込みによる傷害事件。
矢継ぎ早に起こる事件のたびに自分がぶたのぬいぐるみである特徴を活かし犯人に
迫る「山崎ぶたぶた」。いつしか、立川のぶたぶたに対する尊敬の念は高まっていく。
そして、全編を通して語られる「嬰児誘拐事件」においてもぶたぶたはどこまでも
ぶたぶたであり、ぶたぶたならではの救済を人々にもたらすのであった、、
すべての読者に微笑みを与える刑事ファンタジー。プロットにも一工夫あるとは
いえ、なんといっても「ぶたぶた」のキャラクターが素晴らしい。作者は、なぜ
ぶたのぬいぐるみが刑事をやっているのかは説明しない。それを聞くのは野暮と
いうものである。「では、そういうお約束で」と読み進むうちには「どうして、
警察はもっとぶたを警官に採用しないのか!?」とすら思えてくること請け合い。
アイデアを惜しげもなく盛り込んだ贅沢なファンタジー。刑事コロンボの「うち
のカミさん」的遊びもあって、ミステリのすれっからしをも唸らせる傑作である。
「奇蹟」をもたらす者は、やはり「人」ではありえないのである。


2000年2月3日(木)

◆西船橋定点観測。ちぇっ、久しぶりに来たのに何にもないなあ、と安いという
理由だけで手に取ったダブリのカーをレジに持っていくと、レジで値付け直後の
本が平積みになっていた。お、「これ、売りもんですか?」「売りもんだよ」 「売って、売って」
「SF事典」横田順彌(広済堂)500円
新書版は初見。ふーん、こんな本だったんだ。裏表紙の筒井康隆の推薦文がよい
ですのう。見返しのヨコジュンも若い若い!!
d「蝋人形館の殺人」JDカー(ポケミス)200円
◆TVチャンピオンが「魚通」なので、久しぶりに視聴。おお、サカナ君強し!!
やったね、4連覇!ホンマに強いわ。TVチャンピオンが生んだ人気者の一人
だが、堂々たる横綱相撲でございました。
◆掲示板のよしださんの血涙譯にもらい泣き。これは惨い。まあ、あくまでも
ホームページってえのは公開されているものだし、著作権等を侵害しない限り
そこで知り得た情報をどう使おうと勝手ではある。どこのどなたかは知らんが
値段も確認する事なく、掲示板を見た足ですっ飛んでいった潔さには敬服する。
まあ、これも「運」であり「縁」である。後は、本当にその本をもっておらず
その本が欲しい人・読みたい人であった事を祈るのみ。業者さんやセドリだったら
承知しねえぞ!!
◆成田さんのプレゼントに応募。本当に持っておりませんからね(笑)
◆K文庫。あーあ、黒白さんにROMが行っちゃったよ。察するところ、前回の
流れですのう。まあ、コレクションを分割したくない、っていう思いは物凄く
よくわかります。はい。

◆「おぞけ」(祥伝社文庫)読了
祥伝社文庫のホラーアンソロジー4冊目。快調に巻を重ねており、ご同慶の至り。
これまでと違って書き下ろしが3編入った御得用。さて次は全編書下ろしか?
それは非常に喜ぶべきことなのだが、泡坂妻夫の扱いだけは少々ひっかかる。
自社で既に単行本化した作品を収録するというのはいかがなものか?これがなく
ても短編集として成立するだけの分量があると思うのだが、「看板不足」とでも
判断したのであろうか?表紙の作者名の級数も篠田節子と泡坂妻夫が大きいしなあ。
とても美味しく食事をしていたら、御飯の中に小石が入っていたような不快感を
覚えた。以下、ミニコメ。
「歯」とにかくキャラクターの立たせ方が抜群に上手い。いかようにもオチを
つけられる話だが、この展開は予想だにしなかった。女性ならでは。脱帽。
「夜行」お約束ながらも、因果の環の閉じ方が上手。題名のセンスもよい。
「黒い手」パンピー向け倉阪節炸裂。「おぞけ」というアンソロジーの表題に
最も合った作品。テレビでは映像化不能なシーンの連続に戦慄する。「心」が
汚染されていく過程がいやはやなんとも、である。
「塵泉の王」死体消失の謎に物理的解決がついていたのには驚いた。どこか諸星
大二郎漫画の雰囲気のある好短編。ユーモラスな運びと驚愕のラストに拍手。
伏線の張り方といい、カットバック手法といい、非常に完成された作品。
「高速落下」呪われた人々の滅び方がむごい。発想が変わっていて読ませるが
予知能力のくだりと噛み合っていない座り心地の悪さが気にかかった。
「繭の妹」不快感を催させる、というのがこのアンソロジーの主題であるので
あれば、最も成功した作品。美醜についてここまで残酷に書ききるか?作者自身
が美人であるだけに辛いですのう。
「虫愛ずる老婆」生理的嫌悪感極大。やってくれました、SF作家!この「虫」
は厭だ厭だ。筆致がユーモラスだけに、特撮まがいのクライマックスが怖い。
「超鼠記」美しくも哀しいラブストーリー。そしてラストが恐ろしい。鼠に関する
蘊蓄やどこかネジのはずれた駆除業者の描写が印象に残る。
「弟の首」泡坂作品としても凡作だと思うのだが、このアンソロジーには不要な
作品ではなかろうか?


2000年2月2日(水)

◆南行徳・行徳定点観測
「ディック・トレーシー」ALシンガー(講談社X文庫:帯)130円
d「変幻黄金鬼」都筑道夫(富士見時代小説文庫)100円
「セイレンの末裔」富樫ゆいか(早川文庫ハイ!ブックス:帯)100円
「虹色のリデル」松本祐子(早川文庫ハイ!ブックス)100円
「妖面伝説」霜島ケイ(小学館キャンパス文庫:帯)100円
「朱の封印」霜島ケイ(小学館キャンパス文庫:帯)100円
「お嬢さま大戦」森奈津子(学研レモン文庫)100円
「天の星 地の影」水城雄(徳間NV・MIO)250円
「戦場の夜想曲」田中芳樹(徳間NV・MIO)150円
「白百合館の変な人たち」森奈津子(プレリュード文庫)250円
「耽美なわしら2」森奈津子(角川ASUKAノベルズ)380円
「明治の夢工房」横田順彌(潮出版社:帯)300円
MIOシリーズ2歩前進。森奈津子3歩前進。レモン文庫の森奈津子はM3。
霜島ケイ集め続行中。これだけ買ってミステリが1冊もないというのは問題です
のう。あ、まあ、ディック・トレーシーは一応刑事ものか。「変幻黄金鬼」が少し
珍しくなっているのかな?

◆「第五の墓」Jラティマー(ポケミス)読了
掲示板に引っ張られた読書。「ああ、そういえば、まだ読んでなかったね」と手に
とったユーモア・ハードボイルド。実は、密室殺人のおまけ付きである。但し、
あくまでも不可能犯罪はオマケなのでそのつもりで読む事。のっけから、これは
「密室系」であると刷り込んで読むと「どこがやねん?」になってしまう。ポケミスの
800番台では、なぜか人気のある作品。先日もダブり報告するや否や、てつおさん
に攫われてしまった。こんな話。
新興宗教「ソロモンの葡萄園」に入信しちまった姪を連れ出して欲しいという依頼を
受けた俺、私立探偵カール・クレーヴェンはその町に乗り込んだ。ところが、先乗り
した相棒を尋ねて行くと、奴は消音機付きライフルで殺害されちまっていた。おいおい。
さて、どっからきりこんだものか、と悩みつつも、酒場でいい女をみかけると声をかける
ってえのは、性ってやつかね。ところがこのスケが、町の顔役の女だったもんだから、
俺はボコボコにされちまう。なにせ、まだ目立つ事をしちゃいけねえ。ここはじっと
我慢だが、後で覚えてやがれ。とりあえず、「葡萄園」に正面から乗り込んでいくと、
肝心の娘は薬で洗脳されちまって、自分の意思で教団に残るといいやがる。一旦は
引き上げた俺だが、依頼人から紹介されていた町の弁護士マギーと組んで策を練る。
どうも、あの宗教屋は人を殺すくらいへでもねえと思ってやがる。教祖のソロモン
ってえのが5年前に逝っちまってるのに、その死骸を飾っているっていうのは
おつむのネジがぶっとんだ連中だ。それに何だ?「ソロモンの花嫁」ってえのは?
俺は、顔役に借りを返そうと、ちょいと一計目論んだんだが、、
圧倒的なセックスと暴力を基調にそこはかとないユーモアと若干の不可能趣味を
スパイスに効かせたジェット・コースター・ミステリ。お色気ムンムンの美女が
とっかえひっかえ現われ、ギャングにカルトに悪徳警官と脇役たちもてんこ盛り、
田中小実昌のテンポのよい訳文が原作のノリに拍車をかける。不可能犯罪は、冒頭
述べたようにトンデモ系なので、そんなことは忘れて読んだ方が、驚きがあって
よろしい。あと、カルトは戦前から同じ手法をとっていたんだなあと改めて感心
してしまった。とりあえずこの作品は「買い」でしょう。お勧め。それにしても
よく食う探偵だ。朝っぱらからスコッチひっかけながらステーキ食うなよ。


2000年2月1日(火)

◆なんやねん「テニスボールがペシャンコに潰れてしまう水深20メートルの
ような某HP」って?
◆雑事を済ませるために古本屋には寄れずじまい。昼休み時間の本屋での買い物のみ。
「刑事ぶたぶた」矢崎存美(廣済堂:帯)1400円
「KADOKAWA ミステリ」2月号(角川書店)580円
掲示板にも書いたが「刑事ぶたぶた」の有無を書店員に尋ねるのに思いっきり
恥ずかしい思いをする。いい歳をした大人が口に出来る題名じゃないよなあ。
聞きあぐねて探索を自助努力する間に見逃していた漫画を発見。
「バイトくんブックス7:ばかな男」いしいひさいち(チャンネルゼロ)550円
「ののちゃん7」いしいひさいち(チャンネルゼロ)520円
いしいひさいちの新作が立て続けに出ていたとは、全く油断も隙もあったものでは
ない。たまには、書店の棚を真剣に眺めたおすのもよいものである。そのほかにも
欲しい本が目白押しであった。そこはじっと我慢の子。
結局「刑事ぶたぶた」は、恥を忍んで書店員に尋ね、若干手間取ったものの、
女流文学の棚から発掘された。早速、カバーをとって裸の装丁を覗くと、、
ううーん、これはプリティー!
◆「ぶたぶた」に嵌まるおじさん達を尻目にミステリ・ネットの若い衆の間では、
梶龍雄探究が流行っている模様。うんうん、なかなか楽しいかもしれませんのう。
光風社のハードカバーとソノラマ文庫以外は「全くないわけではないが、固まって
は出てこない」ところがなんとも探索のペースメーカー。
◆菅浩江女史直々のお勧めに従って、アスキーのオンラインショッピングで
「アンパン的革命」を「かご」に入れてみる。なるほどまだ「SOLD OUT」では
なかった。アスキーでは、一気に注文が入って首を捻っているのではなかろうか?
どうか無事届きますように。

◆「ダモクレス幻想」高井信(出版芸術社)読了
かなり若くしてデビューしたアイデア・ストーリー作家。個人的には津山絋一と
江坂遊のミッシング・リンクと位置づけているのだが、処女作品集以来久しぶり
に手にとってみた。昨日の「空高く」がなかなか中身の濃い歯ごたえのある作品
だったので「軽量級の作品を」と思ったのだが、成る程これはモスキート級の
軽さであった。会社の行き帰りでも読み切れなかった「空高く」と違って「往路」
のうちに読み切ってしまえた。かなりシモネタも多く、コバルト文庫の頃から、
随分と世間の垢にまみれたものだなあ、と慨嘆。切れ味の悪さは相変わらずで
殆どの作品はオチがみえてしまう。埋め草には丁度よいのかもしれないが、同じ
レベルの作品を固めて読むとつらいものがある。以下ミニコメ。
「ダモクレス幻想」題名の印象からはかけ離れた凡作。主人公の設定はよいものの
架空イベントものとして救いようがない。
「第二走者」私小説風の内幕噺。この作品集ではベスト。ネタに詰まった際の
最終破壊兵器的な作品。謎の提示とスリリングな展開、抒情的にして驚きのある
ラスト、短編として完成している。題名もよい。でもなぜ「珍名」にしたのかな?
「挫折の果て」まあヨコジュン風のエスカレーションホラ噺。主人公の救われなさが
辛い。表題作もそうだが、何も悪い事をしていない主人公が超常現象に翻弄されて
不幸な結末を迎える、という話のどこが面白いのだろうか?
「幸福地獄」同上。
「不運の星」同上。いい加減にしろ!
「瞳の奥に」ワンアイデアをうまくふくらませた。謎と展開が上手い。オチが
奇妙にエロチックであり、完成度高い。こういう読者の劣情に任せるエロの使い
方はたいへんよろしい。シモネタとしてステージが高い。
「懐中時計」高校生の書いたSFみたいだ。今更これを商業誌に売るか?
「ロール・プレイングワイフ」今風のアイデアだが、RPGマニアとしてはもう
少し突っ込んで欲しかった。この程度の膨らませ方ではマンガにはとてもたちうち
できない。まあ水準作。
「揺り返し」ハッピーエンドにほっとする。奇妙なゆらぎ現象を説明しきれては
いないが、逆にそこがよかったのかもしれない。
「至福の時」ああ、またこれかよ。折角「揺り返し」でホットしたところに後味
の極めて悪い作品で締めくくってしまった。まあ、これが作者の持ち味というので
あれば、致し方ないのかもしれないが、、、
総括:作者の等身大の主人公達が苛められる展開にうんざり。夫々をハッピー
エンドに持ち込めるにも関わらず、この自虐趣味はなんとかならないものか。
まだ何冊かあるが、当分読む気になれない。