言いたい放題・日美の映画評論〜映画タイトルあ行〜


愛が微笑むとき

 バスの思いがけない事故であっという間に死んでしまった乗客4人。彼らは自分の成し遂げられなかった夢や晴らせなかった無念の思い故にゴーストとして成仏出来ずにいる。彼らの姿を見ることが出来る一人の青年に、自分たちの願いを託すが…。
 個々の魂が天国へ辿り着けるまでのエピソードは、4つの短篇として独立させても質が高く、4人分感動させられる。「ゴースト〜ニューヨークの幻」にも引けを取らない秀作である。


赤ちゃん泥棒

【寸   評】

 「コーエン兄弟の作品はおもしろい、特にこれはオススメ」といった評判を聞きつけて借りてきたが、まあまあの出来映えだろう、いや、実はそれほど印象に残っていないのだ。
 ニコラス・ケイジが出ているから見れる映画だと思うが、本来彼のはまり役は、しょぼんとした眉毛とスレンダーな長身のせいか、いかにも気の弱そうなそれでいて、いざという時はりりしさを発揮する、といったタイプの役柄。
 「スネーク・アイズ」の時のように普段はちょっと情けなく、だが急に「リッキー、リッキー」と雄叫びを発するこの静と動を使い分けるような個性豊かな役が相応しい。
 その意味では終始妻の尻に敷かれたようなダメパパの役は似合わない。観ている者を欲求不満にさせる。俊敏でワイルドな彼も魅力の一つなのだから。
 アメリカでは何故か演技が上手くないとされているニコラスだが、どうしてどうして決してそんなことはない。はまり役でなくともこの映画でもいい味を出している。
 物語は赤ちゃんを確か盗み出したが、別の人たちに盗まれてしまい、取り返すまでの騒動をコミカルに描いた内容だったと思う。
 以降、ネタばれになってます、、、

 ラストでは、赤ちゃんは手に入らなかったけど、私たちが取り返してあげました、と言えば賞金を手にすることは出来た。だが、正直に自分たちのやったことを告白する。
 この締めくくり方にはそれぞれの意見があるのではないかと思う。
 赤ちゃんが欲しかっただけだという欲深くない正直者の主人公を強調したかったのも分かるし、正直な役がニコラスにはぴったりではある。
 だが、告白を聞かなくても赤ちゃんの父親が早合点して、割り込む隙もなく、「助けてくれてありがとう」と人の話も聞かず、一方的に賞金を渡し、去っていく形で終わらせるという方法もあったのではないか。それなら正直者のニコラスの役のイメージを損なわずに済む。
 そもそも五つ子だから一人くらい子供を盗ったっていいだろう、という考え方自体、ぶっとんでるんだから、正直者をそこまで強調して真面目に終わらさなくてもいいような気はする。
 人生の偶然をうまく利用するというちょっと皮肉った結末がさして珍しいわけではないが、折角設定した偶然を利用しないラストは、物語にしては素直すぎて物足りなさも拭えなくはない…。


アザーズ

 どの映画を観ようかと思ったとき、二つほど参考にさせて頂く投稿型のサイトがある。
 ところが本作に関しては、ある映画と似ているとの示唆が一つあると皆がそのことに触れてしまい、ネタばれを隠さない人まで現れる始末で、すでにネット上ではネタばれが公然と行われているようだ。よって私は既にそのストーリーの結末を知ってしまっていた。
 美しいニコール・キッドマンが主演であることと、ある映画と似ていても描き方がこちらの方が断然いいとの言葉をいろいろ吟味し、信用できるのではないかと思い、思い切って鑑賞した。
 前置きが長かったが、ズバリこの映画は結末を知らなかったとすれば4.5〜5の評価に値する作品だと感じた。
 観る前から結末を知ってしまったことは本当に残念だったので、以下の文章では出来るだけネタばれに繋がらないような書き方にしておいたつもりではある。
 前述した作品はどんでん返しに重きを於いて観客に衝撃を与えることに力を注いでいたような印象が強いが、本作はそれよりもニコール・キッドマンを中心とする登場人物の心情をより丁寧に描いている。そのことにより単なる衝撃の結末で終わるのではなく、結末を知った観客により深い悲哀感を余韻として伝えることにも成功している。
 ある出来事を逆の立場から映像で捉え、そして真実があかされる時にこれまでの映像と入れ替わるシーンが一番心に残った。

 観終わった後、クリエイティブに携わる者として何だか仕事モードになってしまったのだが、逆の世界から見つめて描いていくというアイデアに、こんな方法があるんだ、と強い感銘を受けた。
 つい種をあかされると自分でも作れそうな気になったりするものだが、オリジナルで最初に考え出すことは並大抵のことではない。畏れ多いけれどこの発想を思いついた人の才能をとてもうらやましく感じてしまった。


あなたが寝てる間に

 まずは心憎いばかりのタイトル。見終わった後、なるほどと頷かされた。
 サンドラ・ブロックは女性らしいというより寧ろ男っぽくさっぱりタイプの女優だと思うが、その普通っぽさがこういった恋愛に不器用そうな役やじゃじゃ馬っぽい役などが似合っているように思う。
 「デンジャラス・ビューティ」もはまり役だった。
 さて、内容だが、キャスティングの順番から容易に想像はつくので、ネタばれにならないと思うが、少しでも気になる方は以下は読まないようにお願い致します。

 ビル・プルマンの容貌は誰でも恋に落ちるようなナチュラル系の甘くもニヒルな雰囲気で、この映画でお気に入りの俳優さんに加えてしまった。性格もとてもステキに描かれていて、ハッピーエンドだろうと想像はつきつつもついつい恋の行方を追いかけてしまう。
 「インデペンデンス・デイ」では大統領役を好演していたもののやはり迫力には欠けており、ちょっとミスキャストに感じた。しかしかっこいい人なので役次第でいい感じだろうな、と思っていたが、その通り。
 「ロスト・ハイウェイ」という彼の主演映画があるらしいが、どうなんだろう、と実は気になっている。
 二人を取り巻く家族達の暖かさも感動的である。
 ジャンル分けでラブコメディとされている割にコメディ色は薄いが、ラブロマンスとしてとてもロマンティックな気分に浸れる作品であることは間違いない。


アメリカン・ビューティ

【内   容】

 勝ち気で小言の多い妻キャロリンと、我が儘で父親を煙たがる反抗的な娘ジェーンに挟まれて、じっと堪え忍んできた夫レスター。
 レスターは娘の生活にもっと関心を持つことが大事だと妻に説得され、一緒に学校のバスケット・ボール試合を観戦しに行く。娘のチアガールを見るためだった。しかし一緒に踊っている娘の友人アンジェラに一目惚れしてしまう。
 一方の妻は商売敵の社長との密会に夢中になる。
 マリファナの密売を行っていた隣に住むリッキーという青年と彼の行動を常に監視する父親フィッツ大佐が絡んできて、事態は深刻さを増していく。

【寸   評】

 アカデミー賞を受賞しただけあって、メリハリのあるアクションや、サスペンスでもないのに、時間を忘れ、スクリーンに引きつけられた。
 これは主演のケヴィン・スペイシーと、惜しくも主演女優賞を逃してしまったアネットの演技力以外の何者でもないだろう。
 内容的には、現実の家族崩壊が救われることなく幕を閉じるので、決して後味がいいとは言えない。
 しかし今まで夫が一人我慢することで、均衡をどうにか保ってきた上辺だけの家庭・家族を崩壊させてしまった、その後にやっと見えた本当の人間の優しさや弱さを描きたかったのではないかと思う。
 かなり好き嫌いが分かれそうな内容だと思うが、コミカルな音楽とテンポのいい台詞回しで、重いテーマでありながら全く暗さを感じさせなかった。ケヴィン・スペイシーは「ユージュアル・サスペクツ」や「交渉人」などの知的な役柄の方が断然はまり役なので、演技は押さえられているように見えるかも知れないが、端々に魅せるシニカルな笑いが何とも言えず、夫レスターの悲哀を醸し出していた。
 ケヴィン・スペイシーの演技力だけでも見る価値は十分あると言えるだろう。


アンナと王様

 壮大な歴史物語に相応しい豪華セットと衣装だが、登場人物は親しみやすく描かれている。
 ジョディ・フォスターが思いもかけず、はまり役で、サウンド・オブ・ミュージックをも髣髴とさせる優しく強い優雅なそして知的な女性像を作り上げていた。
 話が進むに連れ、美しく見えてゆき、逆にチョウ・ユンファがださく少々情けない感じに思えてしまった。
 勿論それなりにうまく演じていたが、やはり私は映画は好みの俳優・女優が出ていると少々内容が悪くてもプロモーション・ビデオに終わっても満足させられる質なので、威厳のある絶対王政の時代に近いような王であるにも関わらずいまいち威厳がないなあと思ってしまった。
 これは脚本にもよる所が大きく、力強さを強調できなかったのはチョウ・ユンファだけの責任ではないだろう。
 アンナのあまりにも目に余る発言は現実なら許されることではないだろう、大目に見るにしても限度がある。
 その辺りはやはり王の権威自体を弱々しく描きすぎている気もするが、一つ一つのエピソードはそれなりに興味深く、徐々に二人の絆が深められていく様子がある程度自然に描かれている。
 女優としてそれほどまでに好きではなかったのだが、ジョディ・フォスターの新たな魅力を知ることが出来た映画となった。


遺産相続は命がけ!?

 自らも事業資金を必要とするダニーは、疎遠になっていた大富豪の伯父の遺産相続権利を有していた。父と険悪な伯父の遺産をめぐって親類達が醜い争いを繰り広げる中、ダニーもやがて、恋人に反対されながらもその渦中に巻き込まれていく…。
 感動的なシーンあり、笑いあり、その中に老人の悲哀も織り交ぜてあって、なかなか小気味よいタッチで描かれている。
 ラストのひねりも効いていて、暖かい余韻が漂うあたり、フィクションと割り切れば満足のいく結末である。


イベント・ホライゾン

 96分を一気に見せてくれた。近頃の映画が長すぎるのかもしれない。短い分、全く無駄がない。
 宇宙船で見えない敵と戦うと言えば「エイリアン」を想像するが、グロテスクな怪物が残虐な方法で人間を殺していく「エイリアン」より、余程こちらの方がよく出来ていた。
 心の闇につけ込む未知の力に巻き込まれた宇宙船という設定が、従来のありがちなSFホラーより抜きんでている。正体不明の見えない力に操られるように命を落としていく様は「シャイニング」の上をも行く、心理ホラーを思わせた。
 宇宙船などの映像が素晴らしくリアルで「アポロ13」のようなSF映画としても楽しめる。えぐいシーンもあるにはあるが、「エイリアン」よりはましだろう。後味も悪くない。
 「マトリックス」でも渋い演技を見せたローレンスの演技が光る。


インサイダー

【内   容】

 ローウェルは、米国の圧倒的シェアを誇るネットワーク、CBSの報道番組“60ミニッツ”のプロデューサーだった。ある日彼の元へ匿名の封書が送られる。それはタバコ・メーカの極秘ファイルだった。
 専門的な内容を解読してくれる人物を探したところワイガンド博士に行き着く。ワイガンドはB&W社の極秘ファイルであることのみ打ち明けあとは頑なに口を閉ざした。
 奇しくもワイガンドは科学者としての資質を買われ、B&W社の副社長として、研究・開発に従事していたのだった。しかし、正義を主張するため解雇を宣告され、終身守秘契約に同意するよう脅されていた。
 喘息の娘の医療費を得るために同意するより仕方がなかったものの、自らの信念との苦しい葛藤の日々が続く。
 ワイガンドがローウェルと接触を持ったと知ったB&Wは家族を巻き込んでの執拗な脅迫といやがらせを繰り返した。やがて妻は疲れ果て、子供たちを連れて家を出ていく。それでもローウェルに励まされ、勇気づけられ、“60ミニッツ”のインタビューに応じ、法廷に於ける宣誓証言も決意した。
 ところが、今度はCBS側がB&Wから訴訟を起こされることを恐れ、インタビューの部分をカットする決定を下す。全てを失ってまで正義を貫こうとしたワイガンドの行為はこのままでは水の泡となってしまう。
 さらに追い打ちをかけるように、B&Wによってワイガンドの過去が暴かれ、彼の告発は何ら信憑性を持たないものだと主張される。
 この事態に、CBSへの抗議もむなしく降板を命じられたローウェルは、一か八か彼自身がインサイダーとして、番組揉み消しの事実をマスコミに流すという賭けに出たのだった…。

【寸   評】

 2時間45分が瞬く間に過ぎた。アル・パチーノは確かにいつもより押さえた演技だったが、それこそが演技力というもので、押さえた情熱や闘志が滲み出ていて、まさにはまり役。彼がこのドラマを支えていたと言っても過言ではないだろう。
 ラッセル・クロウは今回は見せ場のない役どころであることも手伝い、やはりアル・パチーノの光には適わなかったが、それでもなかなかいい味を出していた。やはりこれも影が濃くなければ光も輝けない、といったところかもしれない。
 撮影も、随所に流れる荘厳な音楽、そして音を全く消した中でスローモーションの動きを見せ、緊迫感を醸し出す映像技法など、細微にわたって工夫が凝らされている。
 ノン・フィクションで、実名のまま使っていることが大きな話題となったが、そんな宣伝などなくとも十分内容だけで勝負できる作品である。


インビジブル

【寸   評】

 透明人間という発想に惹かれたのだが、蓋を開けると期待外れ。研究に貪欲で自らを実験材料にする、というところまでの心意気は大変良く理解できるが、透明になってからの行動が実に俗っぽくくだらない。もう少し大きな野望を取り込めば説得力も増すと思うのだが…


ヴァイラス

【内   容】

 ロシアの宇宙ステーション“ミール”の通信が宇宙から未知なる生命体がハッキングされる。ミールとの通信中に未知の生命体が宇宙通信船ボルコフ号のホストコンピューターへ侵入してきたのだ。
 漂流しているボルコフ号と出会ったアメリカの船の乗組員たちが、乗り込んで調べると既に乗組員300人はすべて姿を消していた。しかし、この情報をアメリカに持ち帰ろうと金に欲のくらんだ船長の指揮の元、不安を拭えない女性航海士フォスターも含めて男女計8人が船内を捜索していく。
 誰の力も借りずに突然振り降りる碇など謎の怪奇現象に見回れ、ただならぬ事態を感じた時、ボルコフ号たった一人の生存者であったナディアが現れる。彼女の先導の元、未知の生命体に戦いを挑んでゆく−

【寸   評】

 未知の生命体というと、「エイリアン」が真っ先に思い浮かぶが、この映画では「エイリアン」ほどの怖さは殆ど感じられない。子供にも安心して観られるよう、万人向けに作成したのかもしれないが、ホラーにしては物足りない。(私は「エイリアン」のような怖くてえぐい映画は苦手なので丁度いいかもしれないが(^_^;))
 ヴァイラス(英語でウィルスを発音するとこうなる)というのは、“絶滅すべき敵”という意味でそれが、未知の生命体のはじき出した、人類に対する結論だった。このあたりのアイデアはいいと思うのだが、電磁波を使って、人類への攻撃の為に、最初作られた機械はごく小さな物で、何だかおもちゃのように思えて笑えてしまう。次第に人間の体を使って半人間半機械というおぞましい物体を作り上げるよう発展していくがこれはまた、何とも醜悪。
 発想が宙ぶらりんなまま進んでいく印象も拭えない。それほど怖くないB級ホラー映画といったところか。
 人類を抹殺するために作り出した人類と機械の融合体というのだが、スピード感が全くなく、この怪物の動作が鈍いのはもう少し、考えようがあったのではないかと思う。アイデアを生かしきれなかったようで作品全体が惜しい仕上がりとなっている。 


ヴァンパイア 最期の聖戦

【内   容】

 ヴァンパイアが魔力を持てない昼間のうち、その巣を攻撃したジャックたち。しかしその夜、恐るべき力を持つ最初のヴァンパイア、魔鬼がモーテルに現れる。魔鬼はカトリーナに噛みつき、それ以外の者たちは惨殺した。生き残ったジャックとモントヤは、魔鬼に噛まれたカトリーナを囮として連れて行く。だが噛みつかれた者は48時間のうちにヴァンパイアに変身してしまう。魔鬼が黒い十字架を手に入れ、最期の儀式を終えるまでに何とかしなければならない。ところがカトリーナを監視していたモントヤも彼女に噛まれることに…。

【寸   評】

 心臓に杭を打ち付けて殺す点だけは従来の吸血鬼伝説と等しいが、ニンニクも十字架も全く効果が無く、空をも飛んでしまうなど人間に比べ圧倒的な強さで描かれている。それだけにアクションもなかなかスリリング。
 人が真っ二つに引き裂かれたりのおどろおどろしい場面は目を背けたくなるが、話の組み立て方に無理が無く、無駄なシーンも無かった。とはいえ、単にヴァンパイアを退治するだけと言ってしまえばそれだけの内容だから、ストーリー性があるわけではないのに、よくここまで引きつけて見せるものだと感心した。
 評価は3.5〜4の間というところか。
 従来の吸血鬼のイメージをある程度保ちながら、うまく迫力あるアクションを絡めていて、最初から最後まで飽きることなく見ることが出来た。


ウェディング・シンガー

【寸   評】

 ベタな内容と言ってしまったらそれまでだが、私にとっては、この手の純粋なラブストーリーとハッピー・エンドはやっぱり最高!80年代ファッションに80年代ポップスを盛り込んで、内容も「フラッシュ・ダンス」(より断然いい)のような懐かしさで一杯。
 ドリュー・バリモアは太りすぎ〜だったが、キュートな雰囲気はこの映画にぴったり。
 初めて知った相手役のアダム・サンドラーは歌が上手いので最初、歌手かと思ったが、コミカルな演技が定評の俳優らしい。話が進むに連れて、彼の演技が引き立ってきたと思えたのも道理だ。
 それだけではなく、あらゆる分野を器用にこなしているそうで、「リトル・ニッキー」という2000年の作品では脚本も手掛けている。一度見てみたい作品だ。
 ジュリアンを裏切った卑劣な男が気持ちのいいくらいやっつけられるが、映画とは元々こういう風に深く考えず、娯楽として味わうものなんだ、としみじみ実感できた直球映画。4.5〜5の評価をあげたい。


英雄の条件

【内   容】

 米国海兵隊で数々の活躍ぶりを見せ、とうとう大佐まで上り詰めたチルダーズ。
 ある日、知らせを受け、駆けつけたイエメン米国大使館ではデモ活動によって集まった民衆たちが暴徒化していた。
 デモに紛れた狙撃手たちの手も逃れて、大使を無事救出したチルダーズ。
 しかし、攻撃を受けた最愛の部下を自分の腕の中で看取ることに、、、そして、自らも腕を負傷する。
 その時に確かに狙撃手だけでなく、民衆たちが銃を放っているのを確認したチルダーズは、怒りのあまり民衆たちに向けて銃を発射することを命令する。
 83名の命を奪ったこの行為が他国にまでも大きな波紋を呼ぶことを恐れた政府により、ペリー海軍大将は軍事裁判にかけられることが決定したと通告。
 チルダーズは、ベトナム戦争を始め数々の闘いを共に勝ち抜いてきた、今は弁護士の肩書きを持つホッジスに弁護を依頼する。
 チルダーズの行為は殺人か?英雄か?その境界線とは?

【寸   評】

 なかなか見応えのある法廷ドラマだった。
 最終判決は当然どの映画でもお決まりだが、その分、感動が得られる為には、かなりの証拠や説得力ある弁論が必要となる。
 その意味では、最終的には確たる証拠が得られるわけではなく、陪審員たちの心に訴えかけるしかなく、盛り上がりには欠けるかもしれない。
 しかしながら、派手さはなくとも、成る程と思わせる証拠が一つ一つ提示されていく過程を丁寧に描いており、それについての説得力もまずまずと言えよう。
 また、男同士の友情をうまく絡めながら、それぞれのキャラクターを全面に押し出して、全編通して味わい深いものに仕上げている。
 何と言ってもトミーリー・ジョーンズとサミュエル・L・ジャクソンを起用したことが、このドラマを成功に導いたと言えるだろう。
 法廷ドラマというのは、弁論の緻密さが要求される、台詞重視の難しいジャンルだと思うが、地道な展開が功を奏し、最後まで真剣に見ることが出来た。


X−メン

【寸   評】

 「マトリックス」と比較させる宣伝がかえって観客の期待外れ感を生んでしまったのではないだろうか。
 「マトリックス」は、近未来と独特の視点から人類の生とヴァーチャルの世界を融合させ、実に練られた大人のSF物語である。
 それに引き替え、「X−メン」は子供のためのSFアニメ。原作もコミックだそうだが、本当のお伽話として娯楽的に捉えるべきだろう。
 二つは明らかにジャンルを異にするものだという認識を持った上で、ストーリーを深く捉えず、子供の視点で映像を楽しむにはまずまずだと思う。
 CGも「マトリックス」には適わないし、お父さんが休日、体を休めつつ、お子さんの相手もしてあげたい、と思ったときに手に取ってみてはいかがだろう。


エニイ・ギブン・サンデー

【内   容】

 アメリカン・フットボールのチーム「シャークス」の監督トニーは、勝ちのない試合に頭を悩ませていた。
 また、スポンサーとして父から引き継いだクリスティーナは、父とは正反対の全く商業的な考え方で、フットボールを心から愛しているトニーの考えと真っ向から対立する。
 無名のクォーター・バックだったウィリーが、ある試合で素晴らしい活躍を見せ、それをきっかけにぐんぐん頭角を現してくる。しかしそれとともに、トニーの作戦も無視し、チームの結束力の重大さも軽視し、すべてが己の実力だとうぬぼれていく。
 ついにある時、仲間はウィリーを全く補佐せず、最悪の試合になった。スタメンも外され、ようやくウィリーは己のワンマンプレイに気づきはじめる。
 トニーとクリスティーナ、トニーとウィリーの確執、それが溶けだしたとき、ゲームはようやく今までにない素晴らしい展開を見せ始めるが…。

【寸   評】

 いろんな所の批評で書かれていたので覚悟していたが、やはりフットボールの試合があまりに多すぎて、前半中だるみしてしまう。
 元々スポーツ映画にはあまり興味がなく、アル・パチーノだから手に取ったのだが、無駄が多すぎる。話の展開をテンポよくすれば十分2時間でおさまるのではないか。
 特にタックルなど格闘技的要素の強いスポーツは好きではないので(ちなみにこの手のスポーツ…ボクシング、プロレスなどは野蛮な感じがする。相撲は力士の体格自体好きではない。基本的にテニス、フィギア・スケートなど華麗なスポーツが好き、野球もなかなか恰好いい。といった、あくまでも全くの私見なのでお許しを(^_^;))、ルールも全く分からず、試合の流れについていけなかった。
 アル・パチーノの映画にしてはいまいちだったが、相変わらず演技は渋く、うまい。今回は押さえ気味であるが、いつものお得意の演説シーンもあって、アル・パチーノのファンなら後半からは結構満足が得られるのではないだろうか。
 また、出演者などのクレジットが出始める最後の所で、思わぬどんでん返しがあるのがなかなかしゃれた試みで気に入った。最後はやられた、という感じの折角の心憎い演出だったのに対し、前半のあまりに長い試合描写は本当に勿体ないと感じた。 


エバー・アフター

【内   容】

 ダルタニアの元に父が新しい妻とその娘二人を連れて帰ってくる。しかし仕事に行く矢先、父は突然帰らぬ人となり、ダルタニアは継母に召使い同様の扱いを受けながら育てられることになる。
 ある日、かつて父が愛した馬を盗もうとした男を持っていた林檎を投げつけ、落馬させる。
 ところがそれは城から逃げだそうとしていた王子であった。その後継母によって売り飛ばされた一人の召使いを救い出そうと、その雇い主である貴族の振りをして城へ向かう。偶然通りがかった王子は召使いの釈放を命じ、信念を持ったダルタニアに関心を持ち始める。
 林檎を投げつけた農民の娘と気付かない王子の前でダルタニアは貴族の振りをして難を逃れた。王子の積極的な誘いにダルタニアも徐々に心惹かれていく…。
 一方男爵夫人の称号を持つ継母は長女を王子の妃にと躍起になる。しかしついに王子が夢中になっている相手がダルタニアであると知った継母は…。

【寸   評】

 シンデレラを実話と捉え、フランスの歴史背景と上手く絡ませたラブーストーリー。誰もが知っている物語であるはずなのに、既存の寓話と比較しながら、次の展開がどうなるのか新鮮な気持ちで最後まで楽しめた。
 意地悪な継母とその姉妹の性格の違いなどもよく描かれており、悪役のキャラクターもうまくはまっていた。元々一つの寓話であることから、少々つじつまの合わない部分も大目に見ることが出来た。寓話と割り切って見れば身分の違う男女の素敵な恋物語と言えよう。
 しかし、実の二人の娘に対する母の態度が、結局は娘のためでなく娘を自分の名誉のための道具としか考えていないようなところが普通の親子関係では考えられない気がした。
 また、最後に継母を罰する理由もそれではダルタニアがした行為と変わらないような気もして、直接的にこれまでのダルタニアに対する行いを責める方がすっきりする気がした。結局はダルタニアの申し出を国王が受け入れるわけだからあまり大差ないのかもしれない。
 その辺の深い所はあまり考えず、誰もが憧れる永遠のシンデレラ・ストーリーとして楽しめたことを評価したい。評価は4に限りなく近い3.5。


エリザベス

 予告編ではサスペンス調の香りが漂っていたが、期待外れ。脚本次第でもっと厚みを持たせる事が出来たのではないか?
 幼少の頃読んだ「悲劇の王女達」という本によると、スコットランドの王女メアリー・スチュアートが浅慮なのに対して、幽閉されて幼少の折から苦労を重ねたエリザベスは、才知に長けていたらしい。だが、この映画ではエリザベスがあまりに受け身的に描かれていたように思う。
 後半から、女王らしき風格と発言力が伴うが、物語が淡々と描かれ過ぎて、今一つのめり込めなかった。しかしながら、「恋に落ちたシェイクスピア」に通じる衣装や王朝時代の気品は画面一杯に溢れていて、その点では一見の価値があるかもしれない。


オーロラの彼方へ

 オーロラが時空の歪みを生み出し、成長した息子が亡き父の生きていた過去と交信することが出来るというとてもファンタジックで人類誰もが願う、死んだ人間と話すことが出来るという夢を叶えた物語。
 私も亡くなった祖父母と天国の電話番号が分かって電話で話が出来たら、なんて考えたことがあった。
 勿論私が小さい頃考えたようなそこまでの嘘っぽい安っぽい設定ではなく、過去の時代と交信出来るという設定だったが、こんなことが起こったらどんなにか嬉しいだろうと純粋な気持ちになって物語を楽しめた。
 後半少しサスペンスフルに描いていて、過去を修正するという発想は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だな、と思ったが、それよりは低予算で父と息子との交流に的を絞って互いの心情を描ききったものになっている。
 その分、「バック〜」のコメディに反して大変真面目なシリアスな脚本になっていると言えるかもしれない。
 そこで、いずれ死とは向き合わなければならず、過去が変化してしまった場合、パラレル・ワールド化されないのか、という問題やハッピーエンドで安易に終わって良いのか、という意見も出てくるかもしれない。
 だが、私個人の意見としては、後味の悪い映画や悲しい結末は嫌いなので、映画としては過去と交信出来ること自体が夢物語なのだから、ラストも夢物語らしく幕を閉じて正解だったと感じている。



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