抜戸岳南尾根敗退 

宇田 二郎 記
山   行   日   2003年1230日〜31
メ ン バ ー    宇田二郎 大前義孝 矢野寛明 磯川 暁

 抜戸岳南尾根を敗退しました。敗退の直接の原因は、南尾根取り付きルンゼを間違えたこと、アイゼンが足に合わなかった事です。

 視界が悪く、現在位置がわからないため正規のルンゼを見落とし、一本上のルンゼに取り付き、悪雪に苦戦しました。傾斜、規模が分からず、間違えたルンゼは傾斜があまりにも強く、雪がスカスカで6時間以上かけても尾根に上がれませんでした。雪崩の心配は感じませんでしたが、傾斜からすると出ても当然のところです。尾根直下は70°位の傾斜があり、アイゼンに履き替えましたが、足に合わないメンバーがおり又、時すでに遅く下降をしました。下降することとは正規のルートに戻って登りなおすことではなく、敗退することです。今から予備日を使ってまで登る気持ちはありません。サラリーマンの辛いところです。
 今から行ける代案として八ヶ岳に転進して大西パーティーに合流。西穂高岳西尾根を出しましたが、資料は私の頭の中にしかなく、決め手に欠け、このまま下山をしました。

30

 蒲田川左俣林道に入り、左岸の林道のトレースを辿って歩く。左手に穴毛谷が現れるが、更に進んで穴毛谷作業道に入る。ラッセルが始まり、橋で左俣を渡り、南尾根末端に到着。更に林道を追って穴毛谷左岸を進み、大きな堰堤を左岸から越す。次の堰堤も左岸から越す。次の堰堤はラッセルで右岸に渡り、大きく廻って越す。また左岸に渡って堰堤を越し、左岸をラッセルで進む。右岸から沢が入る。一の沢であろう。その右岸には下降を予定している尾根が見える。下から見て降りられそうなのは、この尾根だけだ。更に続けて沢が入る。二の沢であろう。更に左岸をラッセルで進むと周囲は岩壁になり、右岸から沢が入ってくる。三の沢である。と言う事は、対岸の沢が目的のコル3に上がるルンゼだ。しかし、視界が悪く確認できない。下部しか見えず、上部は何となく立って見える。資料によると1550m付近で左岸から入ってくるが、現在は1450m付近。偵察がてらもう少し進んで見る。右岸からルンゼが入り、左岸は岸壁になる。それを回り込んだところにルンゼが入ってくる。1550m付近。ガイドと一致するが、やけに立っている。上部は見えない。偵察がてら少し登ってみる。登れなくは無いが、上部は立っていそうだ。実はこれがコル4にあがるルンゼで、立っているのは当たり前だ。視界が悪く、現在位置も不確かなため、とりあえずこれを登る。交代でラッセルを進めるが、雪がスカスカでステップが崩れ、効率が悪い。ガスが晴れ、視界がよくなるとルンゼは更に傾斜を増し、三俣になる。ヘッドランプを点け右俣に入り、牛歩のごとく進む。南尾根稜線らしきが見える。距離はわずかだが傾斜はますます強くなり、ワカンの限界を超している。おまけに足が泥壁に当たる。皆、不安定な姿勢でアイゼンに履き替える。しかし、一人アイゼンが合わない。明日以降のことを考えるとアイゼン問題だけではなく、湿って重くなったこの荷物の荷揚げはできるのか?天気は?疲労は?どう見ても予備日はフルに使いそうだ。入山前に「4日には絶対帰らないとまずい」と言う意見が何人からか出ており、その場で代替プランを発表して下降、敗退を決意する。一気に下降し、岩壁下に壁から離してテントを張る。快晴になっている。

31日

 雪が降っているが視界はまずまず。昨日のトレースを追って下降するとルンゼの横壁下に「南尾根取り付き」のペイントを発見。昨日発見していれば、と悔やまれる。昨日悩んだルンゼはコル3に上がるものであった。傾斜は緩く、上部もコル4に上がるルンゼよりは傾斜が弱い。これなら登れそうだ。しかし「帰るモード」になっている。トレース通りに下降し、橋を渡って左俣林道に出る。出発から休憩無しで更に歩き新穂高温泉到着。

 結局、転進先が決まらず、正月前に帰る事になった。平湯で温泉に入り、食事をして東京に向かった。


記・磯川
  取り付きルンゼを間違えたという考えにはちょっと違和感があります。ネットにある記録を読んでも、取り付きルートは1つではなく色々あります。穴下谷三ノ沢出合いから取り付いて,穴下槍P5のひとつ上のコルから尾根に出たという記録もありました。(今回自分達のルートを更に左に左に行くルート) というように取り付きルートに正規も何もなく、安全に,取り付けれさえすればいいと思います。 今回のルートもあのまま直上していても,尾根にぶつかる事は間違いありません。 ひとつ大きなミスは,ラッセルに夢中なあまり至急傾斜になった時の状況判断をしていなかった事だと思います。 傾斜が急になり下に笹が見えて来たところでは,全層雪崩の危険がありました。 もっと早くアイゼン,ハーネスを着け立ち木沿いに進むべきだったと思います。 また取り付く前に,下でゆっくりと地形図を広げてルート、地形の確認をしておく事も重要だったと思います。 今回は,目的の尾根に乗る事さえも出来ず悔しさも残りますが,冬山の大変さ,難しさを肌で感じる参考になりました。 抜戸岳南稜は面白そうなコースなので,雪がしまる時期にまた行ってみたいですね。

記・矢野
  年末の抜戸岳山行お疲れ様でした。アイゼンの件ではすみません。ご心配おかけしました。ピン1本緩めて2穴ずらすだけで簡単に靴にあいました。なんとか上ってテント内で調整出来てればと悔やまれます。しかし、そんな事ではなく、特に自分みたいにブランクの長い者の装備に対する下手な慣れや過信、危機感の忘失が多くの危険をはらんでいる事を改めて考えさせられ、そう言った意味では自分にとって課題の多い山行でした。それにお蔭様で、たいがいのラッセルにビビらない度胸?もつきましたし(笑)。宇田さん、大前さん、磯川さん、ありがとうございました。ぜひリベンジマッチを宜しくお願いします。