谷川岳東尾根

日時 2004320日(土)

メンバー 大前、宇田、北島、遠藤(記)

天気 晴れ後くもり時々小雪

これまで谷川岳にはハイキングも含め何度か登ってきたが、直接頂上に伸びる急峻な東尾根はいつも魅力的に感じていました。冬の谷川岳に入るのは自分にとってかなり重圧でしたが行動しない限り、いつまでたっても登れないので、今年度冬のラストチャンスだと思い、同行して頂ける方を募ってみた。そして同行してくれたのは大前さん、宇田さん、北島さんでした。

前夜、天神平駐車場ビルで仮眠。いつもの事であるがさっぱり眠る事が出来ない。登山届けを出し、ヘッドランプをつけて一ノ倉出合に向かう。林道の雪は締まっていて完全に春の様相である。周りの山肌を見ても引っかかっていた雪は落ちきったように見える。しかも今日の気温は低めなので一ノ沢経由で東尾根に上がれる事を確信する。

一ノ倉沢出合に到着。朝焼けで一ノ倉の岩壁がオレンジ色に光ってきた。滝沢下部の氷瀑がものすごい。空は白く霞がかっていて天気の下り坂を予感させる。アイゼンとハーネスを付けて入渓。一ノ沢出合で雪の状態を大前さんと確認して、シンセンのコルを目指して一ノ沢を詰める。雪が締まっているとはいえデブリの間を縫って歩くというのは気持ちいいものではない。支沢から雪崩が来ても極力避けられるように自分なりにライン取りをしながら歩く。沢の中間部くらいで右側から長い氷瀑が落ちてきている。氷のルートとの事である。こんな所を登る人がいるなんて信じられない。驚きである。シンセンのコルは上に見えるがなかなか近くならない。北島さんはかなり息が上がっている。他パーティと抜きつ抜かれつしながらコルに到着。まずは一安心。このころからガスが降りてきて徐々に視界が利かなくなってきた。風は弱く、歩くのに支障は無い。

東尾根の始まりである。先行パーティのトレースを追う形で歩くことになった。コルから10分位の所で露岩を右にトラバースする。いきなりの落ちられない、きわどいトラバースに僕は面食らってしまう。自然に足が震える。即座にダブルアックスに切り替える。そこから更にすぐの所でまた露岩が見えた。今度は岩の基部をマチガ沢寄りに左上トラバースを開始。雪の段差をマントルで乗り越し、岩が上部に見えなくなった所で雪壁を直上する。アックスの石突きではなくピックを刺すくらいまで傾斜が強くなるとかなり緊張させられる。微妙にトラバースがまじり、雪もザクザクだった。この直上箇所は僕にとって最も厳しい所だった。ここを越えると目の前に露岩のシュルンドがあり、気持ちを落ち着かせるために小休止する。この頃から視界はほとんど利かなくなった。第二岩峰は知らぬ間に越えたようである。

再開する。小休止箇所から上は岩は見られなくなり、ひたすら雪稜になる。雪が安定してきてダブルアックスが気持ち良く決まる。しかしガスのため高度感はわからないがスリップは許されないと考えるだけで頭も心もどきどきする。途中クレバスが2箇所あり、トラバースと乗り越しがいやらしい。雪崩の事も頭から離れない。一・二中間稜を合流させてしばらくすると第一岩峰の直前がナイフリッジになっており、先行パーティがロープを使用している。確かに悪そうだ。トラバースしながらのクライムダウンである。ここは大前さんリードでロープをフィックスして、最後に僕がフォローしてここを通過した。

第一岩峰に着く。宇田さんによるとここは二ノ沢源頭部で一ノ倉沢側から岩峰を巻くトラバースがおっかないとの事である。後続もいないことだし、僕はリードでここを巻かずに直登する事にする。(実はここをリードしたかった)下部の5m位が立っているがホールドは豊富に見える。ロープを付け早速取付く。2つめのハーケンまですばやくクリップ。しかしその後が続かない。上のガバには手が届くが「あ...足...足の置き場が安定しない...」、ミシンを踏み出しはじめる。腕もアックスをガシガシ突き刺し続けたせいか、いつもより早くパンプする。「ま、まずい...」、このまま運良く登ったとしても全員迎えるのに時間がかかりそうだ。「大前さん、降ります...」、かなり恥ずかしい。プロテクションを回収する。大前さんに「せっかくロープ出したんだから、このまま岩峰を巻きましょう」と言われる。今の事は忘れて再びリードする。足幅サイズのバンドトラバースである。途中の岩のでっぱりがいやらしい。トラバース後、雪壁を右上する。さすがにロープを付けていると安心感がある。安定したビレイポイントが無くロープが足りるか心配したが、ガスの中からぼんやりと露岩のシュルンドが見えてきて「あった、あった」と喜ぶ。ちょうど50m、3人を迎える。

自分ひとりが直登したいために取付き、しかも登れない、貴重な時間を費やしてしまう。下手したら落ちてたかもしれない。あまりの自分の情けなさに反省どころではない。みんなは「いいんだよ、いいんだよ」と気遣ってくれたのが嬉しかった。このシュルンドはシンセンのコル以来の快適な場所であった。高度感も気持ちがいい。一瞬、ガスが晴れて稜線が見えた。

「さあ、もう少しだ」、登りはじめる。稜線はすぐそこだが、やはりスリップは許されない。「気を抜かないで下さい」とみんなに言うが、自分の気が抜けている感じがする。雪壁で立ち止まり、一度リラックスして気を引き締める。稜線の雪屁が近づいてきた。「さあ、ゴールだ」、雪屁を乗り越すとそこはオキの耳であった。「やった、やった」、終了点が頂上、本当に爽快である。充実感が込み上げてくる。大前さん、宇田さん、北島さんにはお世話になった。僕はパートナーに恵まれすぎていると思った。

下山は西黒尾根を選ぶ。雪屁に注意して楽しく下りる。一部、氷化している部分もあった。樹林帯に入る。途中、宇田さんが「ブナ林に入ると安心するねえ」と言った。本当にその通りである。小雪が舞う中、ブナ林の風景を堪能しながら、僕達はゆっくりゆっくり下山した。

コースタイム

登山センター440)〜一ノ倉沢出合(535555)〜シンセンのコル(740810)〜第一岩峰(1110)〜オキの耳(12101225)〜登山センター1515