八ヶ岳・摩利支天大滝アイス

日時 2004年2月14日

メンバー 羽矢、碓井、遠藤(記)

天気 晴れ

  今週末、どこかでアイゼン練習をやりたいと思っていたところ、他会の友人である羽矢さん、碓井さんが八ヶ岳にアイスに行くとの事で同行させてもらった。僕はアイス経験ほとんどゼロで、所持しているアイス用の道具はアックス1本だけであるが、二人は快諾してくれた。場所は八ヶ岳・摩利支天大滝。どんな所か楽しみである。

前夜、美濃戸口近くの山麓にてテント泊。ささやかな飲み会をする。小雪が舞っていたが、朝になると晴れ。よかった。かなりゆっくり出発したので冬の八ツ岳にしてはあまり人に会わず、静かな入山である。南沢大滝入口からさらに行者小屋方面へ登山道を20分ほど歩き、右側から入ってくる沢に入る。沢の出合の登山道には赤テープが付いている。トレースはなく、膝くらいまでのラッセルになる。

出合から40分位で前衛のF1に到着。ここでギア類を身につける。汗が冷えると寒い。ここは碓井さんリード。最初という事もありかなり慎重に登っている。氷が固いとの事でスクリューが決めづらい様である。続いて羽矢さん。氷をアイゼンでこずく様な感じで小刻みのステップで滝上に登っていった。ラスト僕。スクリューの回収を任される。いきなりテンションかかりそうになる。正直ロープ無しでも行けるのでは?と思っていたのに、見る目のない悲しい所である。
 F1を登り、緩い斜面を登ると摩利支天大滝が見えた。「すごい、完全な柱だ」今まで氷柱と呼ばれるものを見たことがなく、衝撃を受け、僕は完全に見入ってしまう。羽矢さんは早く登りたくてしょうがないらしく一人でせっせとラッセルしている。大滝の基部に着く。またも見入る。「すごいなあ、垂直だ、左右対称だ、テカテカだ、ホールドなんてどこにも無い」これが僕達3人で独占できると考えるだけでわくわくする。羽矢さんは氷の状態を観て、ロープを付け氷柱の左寄りを登りはじめた。スムーズに登るように見えるが、スクリューを決めるときはかなり辛いようである。時々、片手でレストして、もう片方の手のひらを開閉させている。本当に辛そうだ。黙々と登る。異様な緊張感である。等間隔にスクリューが並ぶ。落口近くで突然激しいスノーシャワーを浴びるが全く動じない。そして滝上まで登り切った。トップロープをセットしてもらう。羽矢さんが降りてきた。「いやあ、オンサイト出来て僕は嬉しいよ」と言った。完全にぐったりした様子だった。続いてトップロープで碓井さん登る。僕は動きを学ぼうとするがやはり見るだけではわからない。氷が固い様で、手がうまく決まらないようである。下部で苦労しており、核心との事である。

そして僕の番(もちろんトップロープ)。「う〜ん、難しい」、プロテクションラインを登るべきなのに、なぜかあらぬ方向に進んでしまい、しかもほとんど上に行っていない。一旦降りて、再トライする。今度はうまくラインに入った。フリークライミングのように登ろうと思っていたが、とてもそんな動きは出来ない。常にどっかぶりの岩を登っているようで瞬く間にパンプする。アイゼンの立ち込みなんてできっこない。羽矢さんに「アックスの打ち込み場所を斜め上じゃなくて、真上に打ち込んでみて」と言われる。僕は苦しくて返事もできないまま、真上に打ち込む。「うん、楽になった」変化を自分なりに感じる。今度は「足をステミング気味に開いて手足で体全体を三角形にしてみてよ」と言う。僕は既にパンプを通り越している。「うう〜、三角形か」とにかくやれるだけやってみる。少しだけテンションを避けられるようになる。そして苦しみながらも自分なりのパターンが出来てきた。三角形体勢→右手引き付け→左手打ち込み→左足蹴り込み→右手打ち込み→右足蹴り込み→三角形体勢...。こんな感じでじわじわ上に登っていく。「おおー、いいぞー遠藤君、カッコになってきたよ」声援がとぶ。もう腕力は無くなりアックスを「打ち込む」というより「添える」状態である。「こんな機会はめったにない。テンションまじりでも上まで登りたい」と自分に言い聞かせ登り切った。腕力・握力全て無くなった。息も絶え絶えですぐに声が出なかった。フリークライミングでもここまで消耗させた事はない。40分はかかった。僕の今日のアイスはこの1本で終わってしまった。

その後、羽矢さん、碓井さん1本ずつ登り、お茶を飲んで大滝を後にした。今日の摩利支天大滝はまさに僕達3人だけの「遊び場」であった。

羽矢さん、碓井さんと組んだのは初めてであるが技術面も含めて本当に楽しくさせていただき、感謝の念に耐えません。これからもお互い楽しく山に入りましょうね。