北岳バットレス 下部フランケ〜Dガリー奥壁

                        2005/7/29 三堀、めぐみ

dガリー大滝出だし
バットレスに挑むのは6回目。
これまで5回のうち完登できたのは一回のみ。
技術的に問題だったわけではなく、
ガスや雨、落石に追い返されてきたのだ。
今回は2年前取り付き敗退した下部フランケ〜Dガリー奥壁をやる。
アプローチは初めてdガリー大滝にとる。
「V級」というグレード付けだが、実は侮れない。
出だしはトリッキーでラインを取り違えるとはまる。
実質W〜X級はありそうだ。
この上は易しくなり、3ピッチで下部フランケ取り付きに至る。
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下部フランケ1P目
A1だが、フリーなら5.10a。
ここをフリーで登るのが今回の目的。
しかしまたもやガスが広がりだした。
そのことは気にしないようにして取り付く。
出だしは残置のラインが3本あり、
その真ん中、フェイスに走るクラックが正規ラインか。
見た目は傾斜もなく容易に見える。
しかしそれはバットレスの幻想にすぎない。
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下部フランケ1P目
一段上がって張り出しを苦しい体勢で越える。
2、3手上がるとアンダーに手が届くが、その上が厳しい。
アンダーにキャメロット0.4をかませるとちょっと余裕ができる。
何度か行きかけては戻る。
良いホールドがない。
スタンスも小さい。
下部フランケ1P目
右の縦ホールドと
左上の小さなカチでアンダーの上に立ち、
微妙なバランスでようやく伸び上がる。
目の前に残置ピンがあるが、
クリップする余裕がない。
そのまま行くしかない。
「行け、行け!」
勢いで伸び上がると左手がバンドに届いた。
そこに立った時には思わず叫んだ。
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下部フランケ3P目
1P目のフリーに成功しただけで半分以上は満足。
岩を抱え込みジャミングで越える、
案外手ごたえのある2ピッチ目をこなし、
3ピッチ目からは精神的に楽な内面登攀となる。
どこも岩はしっかりしていて、
テクニックを存分にぶつけられる。
つまり「快適」な岩場。
フリーで挑むには最高だ。
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下部フランケ4P目
上部のハングを目指し、そこを左へ抜ける。
傾斜もあり、おもしろいピッチだ。
ここを抜けるとラインは左右に分かれ、
右はピラミッドフェース側へと行く。
我々は上部Dガリー奥壁へ向かうため、
不明瞭な左方向へ登っていった。
草付きバンドを左へ20m横断し、
一段降りるとdガリーになる。
そこを奥壁ハングに突き当たるまで詰めた。
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Dガリー奥壁1P目
有名な3段のハング越えだが、傾斜はなく威圧感もない。
核心は抜け口で、レイバックで腕力を使う。
抜け出たところで広がるのは、
赤い、
バットレス独特の平たい壁。
そこに何本か縦横にクラックが走っている。
右上に上がるクラックが、
いわゆるDガリー奥壁のルート。
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Dガリー奥壁2P目
クラックからスラブのX級ピッチだが、
前半のクラックは易しい。
このピッチグレードは後半のスラブのせいだ。
スラブが不得手な者にはすこぶる厳しく、
得意な者にはすこぶる快適なピッチ。
上にはバットレス最後の砦、
城塞ハングが見える。
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Dガリー奥壁2P目
後半のスラブ。
簡単そうだが、本当はホールド、スタンスともほとんどない。
バランシーなクライミングを要求される。
リードで登ると、密かに核心かも?
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Dガリー奥壁3P目
いよいよ城塞ハングへ近付く。
すっかりガスも晴れ、景色も素晴らしい。
日本最高所の岩場で、
アルパイン・クライミングをする。
これぞ北岳バットレスの醍醐味。
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Dガリー奥壁3P目
奇妙な具合のチムニー(オフウィズス)に入る。
このチムニー、城塞ハングの向こうまで突き抜け、
深い。
ちょっと恐い景色だ。
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城塞ハングを抜ける
完全なチムニー登りで城塞が割れた部分を抜けると、
登攀は突然終了となる。
眼下には大樺沢、遠方は鳳凰三山。
そして北岳山頂まではお花畑の登り。
そこは、
バットレスを登らないと味わえない、
天上の楽園。
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めぐみ(記)

<はじめに>
 3年前。ふたりでピラミッドフェースを登りに来たとき、Dガリー奥壁のパーティに写真を撮ってもらった。四尾根から広がるDガリーの広大なスラブに魅了された。 
 2年前。dガリー大滝の取り付きでの身支度で、ハーネスがないことに気付いた。絶好のクライミング日和だった。ショックから立ち直るためと相方への申し訳なさで八本歯から山頂を経て帰った。
 昨年。相方が旅に出ており北岳山行は実現しなかった。そして。梅雨明け10日の平日を狙って再び計画。梅雨は狙い通り明けた。が、直前まで大型の台風が関東上陸すれすれ。それも見事に去ってくれた。台風一過のピーカン夏山が期待された。

<アプローチ・ベースキャンプまで>
 スーパーアルプス林道は今年、全面通行止めである。28日朝7時半、立川を自家用車で出発し、夜叉神峠登山口に駐車。平日だというのに人も車も多い。この季節は平日も週末も関係ないものだ。事前にネットで調べた時刻とは異なり、30分置きにバスは出ていた。但し甲府や途中の市営駐車場から乗ってくる登山者で座席は埋まっている。11時のバスで40分程で広河原へ。腹ごしらえをし、12時過ぎに歩き出す。
 大樺沢方向への登山道は、多少水量は増しているが歩くには何ら支障なく、涼やかで気持ちよい。二俣から白根御池、15時過ぎ着。御池小屋は改装工事中。いつもの高台にはプレハブ小屋が建ち、辺りもテントで埋まっている。小屋から一番離れた平地に幕営、のんびり過ごす。いつのまにか御池周囲はテント村になっていた。

<アプローチ・取り付きまで>
 29日2時半起床。星も見えるがガスもかかっている。雑炊を食べて3時20分発。C沢に入る頃にはすっかり明るい。いつの間にか二人組みのパーティが先行していた。御池小屋から出ていく人の気配はなかった。二俣で待機していたのだろうか。或いは未明に広河原を出てきたのだろうか。それにしても毎度この詰めはしんどいよぅ。しかもいつもと何か違うなぁ。案の定、彼らに釣られて気がついたら目の前はaガリーだかbガリーだ。ザレた斜面を這いつくばって左へ左へ。ようやくdガリー大滝。

<下部岩壁〜フランケ>
 5時40分登攀開始。大滝のところどころにミヤマオダマキがアクセサリーのように咲いている。2Pで緩傾斜帯。更に左手のガリーをコンテで広いバンドまで。コンテだが、思ったほど安全な場所ではなかった。途中からビレイもした。
 フランケの取り付きは明瞭ではない。ハーケンが2枚打ってある程度。右上の岩壁を見渡すと、3通りほどの残置スリングやピンがありどこを選べばいいか迷うが、相方の勘で真ん中辺りにザイルを伸ばす。
「どのピッチをリードしたい?」
「俺は下部フランケの1P目」
「私はDガリー奥壁さえ登れれば。下部フランケのことは実はあまり考えてなかった」
 事前の打ち合わせの通り、彼はこのピッチに真剣に取り組んだ。しばらくあちこち手探り足探りをしていたが、張り出し気味のフェイスにどうにか体を持ち上げて核心を終えたかと思ったら、そこから5mがシビアだった。小ホールドをうまく使って浅いバンドにマウントリングしたとき、歓喜の声をあげた。もうこれで満足と言っていた。でもまだまだこれからだよ。私のDガリーが待っている。
 今回は白山書房と廣健さんのガイドブックをコピーしてきたが、ピッチの長さ、切り方は白山のほうが参考になった。
 つるべで進む。2P目は自分の大きさほどの岩を抱きかかえるような格好でジャミングが入り、W級とはいえ緊張した。3P目内面登攀って、安心感がある。4P目凹角からハングを左に出るまでは明瞭だったのに、そこからピンは乏しいは、結構草は付いているはで、ルート図とにらめっこしても「クラックを左上」のクラックがどこだかわからない。左のdガリー方面を眺めてもガスっていてよく分からない。方向は間違いではないだろう。40m進め、ハーケンが2枚あるまずまずのテラスで相方を迎え、探ってもらう。ひとつ上のテラスにピン3つと古スリングの残置があった。ここまで上がったほうが、次のdガリーへのバンドトラバースでザイルが重たくならなくて楽だろう。5P目バンド中にはピンがたまにある程度(概してピンは少ないが)。最後4m程バケツ状の草付を下りれば再びdガリー。

Dガリー奥壁>
 Dガリーの核心といわれる1P目はガスっていることもあって、見上げてもどこか分からない。ルンゼを4〜50m、コンテで上がる。ザイルを肩に乗せている方は重たいし足元が取られたりで息が切れる。9時、どっかりした3段のハング基部のテラスに到着。
 P目、もちろん私から登らせてもらう。ハングといっても足は着くし、手はガバである。特に最後の抜け口は短い足を精一杯開脚なんかして楽しい。この上のクラックはカム(キャメロット0.75)をひとつ決めて、また楽しい。上を見上げると、いつの間にかガスは晴れ、「夢のDガリー奥壁」がどーんと目の前に広がっていた。こういう感動って、たまらない。
 2
P目、スラブに走る足幅クラックを右上するが、やさしくてこんなのX級じゃない、と言っていた相方。後半の上部ドスラブに唸っていた。右手のマッチ箱にふたりパーティがいる。あのとき私はあそこにいたが、今日はこっち。あぁ、嬉しいなぁ。
 3
P目、下半身チムニー。こういう形状の岩は珍しい気がする。この岩までは、私は左から上がったが、左右どちらでもいいだろう。難しくないからランニングは少ない。
 4
P目、城砦チムニー。チョックストーンをくぐってでもいけそうだが、
「男の子だから上から登る」
 とか言って登っていった。これを抜けると一応終了点。ザイルをまとめてクライミングシューズのまま1
P分あがればお花畑である。11時15分。ガチャをまとめて喘ぎながら山頂へ。

<下山>
 稜線に出ると、西からの風に吹かれて驚く。バットレスはあまり風を受けないから案外平和なのかも。すっかり晴れ渡った空のもと、賑わう山頂を後にして多くの登山者とすれ違いながら御池小屋に14時。帰りのバスの最終は広河原16時半発だ。さっさと荷造りを済ませ、既に笑っている膝を更に笑わせて樹林帯の道をひたすら下る。最終より一本早い16時のバスにぴったり間に合いホッとする。ところがやはり満席で、ザックを横にして腰掛けて揺られながら夜叉神に戻ると、さすがに気持ち悪くなってしまった。
 それでも立川に帰って20時には焼肉食べ放題のお店にいたのであった。

<まとめ>
念願のというか懸念の壁を攀じることができた。よかった。
二ルートとも、残置ピンは少ない。ハーケンを打ち足す必要はないが、カムはそれなりに使った。キャメロットの0.3〜1番がひとつずつあると心強い。
バスの時間があるため、登攀日は早めに取り付いて下山できるようプランニングをしよう。私たちももっと時間に余裕ができると考えていたが、やはりバスの時間が気になった。まぁ、今回は成功、充実、満足。