熊本県小国町で生まれた坂本善三は
76年の人生の殆どを、故郷熊本で過しました。
杉林の中に古民家を改装して建てられた
全館畳敷きという、珍しい坂本善三美術館もその小国町にあります。
お隣の南小国町には
今ではすっかり全国ブランドになってしまった黒川温泉があり
この近辺はここ数年でかなり開発が進んでいますが、
一歩奥に入ると、そこには見慣れた
九州の山あいの風景が続いています。
九州でなくても古い民家などに馴染みを感じるならば、
古い石垣を美しいと思うならば、
坂本善三の絵も好きになるかもしれません。
「抽象画なんて怖くない」
ですよ。
抽象画はよく分からなくて、どうも足が…
という人は、彼の絵から始めるのもいいかも知れません。
そして、自分の大好きなおじいちゃん、おばあちゃんが
九州の山間の村の古い家に住んでいると想像して下さい。
その家の一部分を描いた絵を見ると、とても懐かしくなりませんか?
或いは子供の頃、田舎に行って遊んだ時に見た川の中の魚の群れ。
坂本善三の絵は、まさにそういう感じです。
彼の絵には黒が多く使われていますが、 Blackとは違うんです。
それは日本の黒、墨の黒、炭の黒。瓦の黒。
Redではなく朱。 Grayではなく鼠色。
障子の白。 白壁の白。
土塀の黄土色。
朽ちた板壁のこげ茶色。
坂本善三は誰よりも暖かい黒を表せる画家の一人ではないでしょうか。
どんなに黒ばかりの絵にまわりを取り囲まれても
ちっとも圧迫感がなくて、
家の中にいるようにほっとします。
この展覧会は、おまけに7枚のカードも貰えてたったの300円!
こんなに安くて大丈夫なの?ってこっちが心配になるくらい。
大掛かりな企画展以外にもこんなにいいものがあるんです。