「柳幸典 個展」'YUKICHI KV644955H'
三菱地所アルティアム
2002.3.21 - 4.21

少し前、第2回福岡アジア・トリエンナーレで
作品を見たことがあったのと、
福岡県生まれの彼の、約10年ぶりの里帰り個展ということだったので、
さっそくアルティアムまで見に行ってきました。
今回の展示は「アントファーム」と「マーチング・マネー・カブト」
「大東亜仮想通貨千羽鶴」だけでしたが
それだけでも十分でした。

一番おもしろかった「アントファーム」は
透明のアクリルケースの中に彩色した砂を入れ、
一万円札の絵'YUKICHI'を作り
その中に何匹もの蟻を放ったものです。
蟻は地中でしている仕事=巣を作ることをケースの中で行うので
当然絵は少しずつ崩され
巣の方はどんどん伸びていくわけです。
更にケースとケースが細いパイプで繋がれているので
こっちで崩した砂(お札)が、あっちのケース(国)に運ばれていきます。
子供の頃(大人でもいいですが) 蟻が食べ物を巣に運ぶのを見るのって
楽しくなかったですか?
その時のように、土を崩して運んでいくのを見るのが単純におもしろくて
ついつい見入ってしまいました。
でも蟻の動きに目を取られてふと気付くと
諭吉の顔が崩れているんですね。
そこでこれは子供のおもちゃではなく、
私達大人にシリアスな問題を提起していたのだと
はたと気付くわけです。
たくさん折られた鶴やカブトも
作業そのものは単純な遊びですが
過去に占領した国、された国の紙幣を使うことで
目を逸らしがちな過ちを私達の面前に晒しているのですね。
(折り鶴はまさにつるされています。)
彼の他の作品もそうですが、国家や民族、
政治問題など重い問題を含んでいながら
大抵子供の無邪気な遊びを装っているので押しつけられた感がなく
気負わずに見ることができます。
実際、会場に来られていた柳さんとお話したのですが、
そういう重いテーマを追っている人には見えない
とても優しく、穏やかな話し方をされる方でした。






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