彼の紹介の中では必ず触れられる
在日韓国人二世、孫雅由(ソンアーユ)の
これまでにない大きな個展が福岡で開かれました。
実行委員会が関西にあるにも関わらず
ここ福岡が会場として2箇所も選ばれたことは少々驚きでした。
常々地方の弱みを感じていた私も
今回ばかりは福岡に住んでいることをありがたく思いました。
絵画、版画、ドローイングからビデオ、
パフォーマンス、インスタレーションと
数多い作品の一部でしかありませんが、
彼の半生を垣間見ることができる
見ごたえのあるものばかりでした。
空間や間合いを大切にするという孫雅由は
色だけでなく、時間が作り出す空間や、感覚の間合いまでも
ひとつの絵で表現しようとしています。
まるで陶器のような質感を持ったものや、
やわらかな布に包まれたかのようなやさしい手触り、
手のぬくもりや体温を感じさせるものがあったり、
あるいは色や模様が細胞の一部になって、
生命体を産み出しているかのように見えるものもあります。
また、作品全体が湿り気(呼気)を帯びているようにも感じられます。
美しい色の隙間から噴出す意思の強さは
やはり、在日という彼の置かれた立場を反映しているのでしょうか。
この展覧会は、孫雅由を支援する人々で作られた
「孫雅由展実行委員会」によって開催されています。
残念なことに、彼はこの展覧会が行われた後の2002年に亡くなりましたが
今回のように彼の作品を愛する人達の助けによって、
再び私達の前に現われて欲しいものです。