思いきったにじみや色使いが叙情的で美しい
エミール・ノルデの水彩画。
濃厚な水彩画とも言えるでしょうか。
デンマークとの境の北ドイツで生まれ育ったノルデは
生涯この地方を愛し、その風景を描き続けています。
平たく続く湿地帯に走る運河や、その横に立つ風車。
だだっ広い平地を覆う雲の流れ。
遠くに霧のようにかすむ船の影。
その一方で躍動感溢れる人物も多く描かれています。
この展覧会の中のテーマのひとつ。
「ダンス」
まるでダンサー達の動きを、ストロボをたいて切り取ったかのように
版画やリトグラフでリズム感たっぷりに彫られています。
「人」
この展覧会のちらしの表紙に使われた「黄色と緑による女の肖像」。
これが見たくて下関美術館まで来たと言ってもいいくらいでしたが
やっぱり来た甲斐がありました。
顔も体も黄色の人物像なんて
こうやって文字にしてしまうと、見たことのない人は
ぶっ飛んだ絵を想像してしまうでしょうね。
でも、モデルの表情のせいか、穏やかな印象でした。
他の女性像も大胆な色使いでインパクト大です。
「描かれざる絵」
第二次世界大戦中、ナチスから禁じられていたにもかかわらず
数人の友人の力を借りながら、隠れて制作していた頃のものです。
目立たないように大きなカンバスは使わず、ほんとに小さな絵ばかり。
昔描いた絵の上からや、裏を使って描いたりと
どんな逆境の中にあっても絵を描き続けたいという情熱が
ひしひしと伝わってきます。
さすがにこの頃の絵は他の時期とは大きく違って
暗い色調が目立ちました。
「花」
シリーズの中では一番水彩画らしい絵で、
絵の具のにじみと花びらの揺れる感じがぴったりです。
取り立てて誇張して描いたりはしてないのに、
実物の美しさが更に増したような絵でした。
私は芥子のまばゆい赤に特に惹かれました。