「モンゴル近代絵画展」
福岡アジア美術館
2002.9.14 - 11.10

ここを見ている人の中で、
モンゴルの美術を見たことがある人って
どのくらいいるんでしょう。
そのくらい私達の目に触れる機会が少ないモンゴルの近代絵画展は
これが世界でも初めての試みです。
私が今まで持っていたモンゴルのイメージは
ステレオタイプのものではないかと思っていました。
でも、ここで見たものは、真っ青に塗り込められた空、
空との境界まで続く茶色の大地、
そこに暮らすたくましくい顔の人々と、
彼らの生活を支える家畜達。
まさにイメージ通りのモンゴルでした。
その労働者達が、社会主義の代表的なモチーフであることは
否定できないのですが…。

面白いことに、小さい絵が少なく、
やたら大きな絵が多かったようです。
広大な自然を描こうとすると、
どうしても小さいキャンパスでははみ出てしまって
こんなにも大きくなってしまいました、というくらい大きいのです。
題材もシンプル。
色もシンプル。
大らかな気性をそのまま表したような単純な構成。
そしてどの絵も、その根底には
自然がどれだけ自分達の生活にとって大切なものかを
しっかりと意識した視線が感じられます。
初心に帰った絵というのは、こういうものでしょうか。

1990年以降起こった民主化運動により、
他のアジア諸国のように、生活も文化も西洋化の道を進んでいるので、
遊牧民に代表されるモンゴルの姿は
ひとつの側面でしかありません。
最近ではパフォーマンスやインスタレーションも増えています。
それでも、東南アジア諸国で多く見られる
宗教、女性差別、政治に対する不満などをぶつけた作品は
少ないような気がしました。
見終わった後すがすがしい気分になれる
素直でストレートな絵が多かった展覧会でした。






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