「リュック・タイマンス展」 Luc Tuymans Sincerely
東京オペラシティアートギャラリー
2000.10.22 - 12.28

久々に“絵”で衝撃を受けました。
ここ数年、アートがパフォーマンスや
インスタレーション中心に変わっていき
正直に言うと、食傷気味になっていました。
もちろんそれまでにも衝撃を受けた絵はありました。
でもそれは、どちらかというと「感動」であり、
今回はそれとは全く感覚の違う「ショック」でした。
ひとつの平面が、どんな過激なパフォーマンスよりも
強い衝撃を与えることができるということにとても驚いたのです。

柔らかい色。柔らかいタッチ。
霞のように儚げな雰囲気。
それなのに、とてつもなく悲しい。
破壊的な構図や、過激な色彩、暗いテーマだけが
悲しみを伝える方法ではなかったのです。
はっきりと目には見えないけど
ひたひたと忍び寄って来る恐怖や、
時々背筋を走る冷たい感触。
背景に隠された暗いテーマを全く知らなくても
一目見てそういったものを確実に感じさせるのです。
動物や子供でさえも癒しの対象にはなっていません。
この会場の持つ無機質で独特な雰囲気が
余計にそう思わせるのでしょう。

後で知ったのですが、空間自体も作品の一部ということで
作品の展示の仕方もタイマンスの意向に沿ったものにしたということです。
高い天井と、真っ白な壁の中で彼の絵に囲まれていると
自分がどこかに幽閉されているかのような錯覚さえ覚えます。
こんなに気だるく、重苦しいのに、
どこか救いがあって欲しい、あるのではないか、と思わせるような作品でした。






















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