「舟越桂」展 KATSURA FUNAKOSHI WORKS:1980-2003
広島市現代美術館
2004.4.4 - 5.30

2003年秋、東京都現代美術館で巡回展が開かれていた頃、
福岡市の三菱地所アルティアムでは
それとは別の「舟越桂展」が開かれていました。
彫刻は一体だけで、あとはドローイングという
地味な展覧会だったにも関わらず
このところの舟越桂の人気を表すかのように
会場は若い人達で一杯でした。
やっとその巡回展が手の届く所まで来たので、
広島市現代美術館まで行って来ました。
ここには初めて来たのですが、建物がかっこいい!
外観はもちろん、中の備品や照明までも
雰囲気が統一してあって、とても落ち着きます。
特に照明には気を配ってあって、
今まで行った美術館の中では
一番見やすかったように思いました。
中庭や階段も作品になってますが
建物に馴染んで違和感がありません。
カフェも美術館っぽくなく、ケーキも美味しいし、
こんなすてきな美術館で、時間を過ごせる広島の人がうらやましいです。

本題から逸れましたが、展覧会の方も
この会場に負けないくらい素晴らしいものでした。
彼の作品の特徴のひとつ、遠くを彷徨っているような視線。
実物を見てあることが分かりました。
正面に立っても、横に立っても目が合わないなあと思ったら、
右目と左目の焦点がずれているんですね。
生身の人間のように見えるのは、
私達人間のように、この彫刻にも一体、一体に
体の歪みがあるからだということも分かりました。
ほとんどが、右か左の肩が下がっているか
顔が少し傾いたりしているんですね。
これが本当に楠でできているのだろうかという程
皮膚は皮膚らしく、綿は綿らしく、皮は皮らしく、金属は金属らしく。
皮の靴なんか、ほんとによく磨かれて光っているんです。
シャツの皺の寄り方も、本当の綿みたいだし。
現代美術館ならではという造りの半円形の会場に、
十数体の作品が中央に向かって立っていて
その真ん中にいると、本当の人間に見つめられているような感じになります。
舟越桂の彫刻は、現実と仮の世界を彷徨う生身の人間を表しているようでした。




≫Home