福岡市美術館で2000年から開催されている
21世紀を代表する地元福岡の作家展の第6回目。
ちなみに第5回目は去年の「片山雅史」でした。
「地域、適性技術、協力」がキーワードになっているように、
今、福岡のアーティストと言えば藤浩志の名前が真っ先に挙がるくらい
最も精力的に活動している人のひとりです。
地域とのコミュニケーションを大切にし
2000年から始まった「かえっこバザール」では、
家の中で眠っている不用品を持ち寄って、物々交換の楽しさを味わえます。
福岡市美術館で開かれたトークが4回という多さも、
できるだけ多くの人に向けて発信したいという気持ちの表れでしょう。
大学時代に専攻した日本の伝統工芸を飛び越え、
海外青年協力隊として赴いたパプアニューギニアで
彼の今に繋がる価値観が形成されます。
その大きな形の一つになったのが、真っ黒の「やせ犬」です。
お腹がきゅっと引っ込んだ「やせ犬」もよく見ると、その目は大きく開かれ、
戦闘機を引っ張るその足は意外とがっしりして、生命力に溢れています。
混沌とした世界の中での力強さが
彼の美意識、原点になっていると思います。
今回、多数展示された飛行機状のクロス。
その上には最近のものから、30代、40代には懐かしい昭和のカケラが
溢れんばかりに乗っています。
やせ犬の作りかけ、キューピー、かえる、消しゴム、プラカー、乾電池、CD。
PCコードやPC基盤、キーボードまで、
今となってはガラクタでしかないものが
戦闘機の背中に乗って空を飛んでいるように
一面に広がっている様子は圧巻です。
しかし、会場は極端に照明が落とされているので、
よく見るためには用意された懐中電灯で照らしていかなければならず
本当ならゴミ処理場行きになりかねない物たち、ひとつひとつを
じっくり眺めているうちに、記憶が過去に飛んだり、
反対に未来に飛んだりしていきます。
きっとこの飛行機も、藤浩志と同じく、周囲に違和感を感じながら
あるいはこの飛行機の上に彼の違和感を乗せながら
これからも飛び続けていくような気がしました。