CDの音楽信号をオシロスコープで見てみました。

 左上図はモノ録音の左右チャンネルの波形を表示したものです。同じ波形が出ていることがわかります。
  音源 Beethoven:交響曲第7番 O.クレンペラー/PO.(55) EMI CDM7 63868 2

 左下図は同じ演奏でステレオ録音でリリースされた盤を表示したもの。思った以上に違う波形が出ているものです。

  音源 Beethoven:交響曲第7番 O.クレンペラー/PO.(55) EMI CDM769183 2

 表示は1mS/div 500mV/div

 左図は上記のCDの左右チャンネルをオシロスコープに入力してリサジュー図形を描かせたものです。上がモノラル盤。XYチャンネルに全く同じ波形が入力されているので、1次関数のグラフのように右上がりの直線になります。TestamentからリリースされているEMI音源のMozartも同様きれいな直線でした。

 左図下はステレオ録音盤を表示したもの。左右の音系形に相関関係がないので絡まった糸のような形になります。

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 以下は、クレンペラーが60年に指揮したBeethovenチクルスの録音のうち、9番の手持ちにあるレーベルを比較したものです。
Cetra盤 CDE1051

 波形を見てもモノラルであることがわかりますが、リサジューは完全なモノラルと比べると若干膨らんでいます。
Arkadia盤 CDGI759.1

 Arkadia盤はきちんとしたモノラルですね。リサジューはむしろCetra盤よりきれいな直線になっているように見えます。
M&A盤 CD-866/890

 これは、某紙面で叩かれて以来、悪名高き盤として有名になったM&A盤を再生したときの波形です。Stereo録音を入力したときと同じような波形になっています。つまり、左右チャンネルの音は同じではない、ということです。と言ってもステレオ録音のように左右チャンネルから全く違う音が出ているというわけでもないので、恐らく位相を変換するなどして音の広がりを出すような加工がなされているのではないでしょうか。
Classic Option盤 CO3527

 M&A盤と同様かなり加工してあるようですね。波形からみると逆相になっている部分があるようです。
Living Stage盤 LS347.17

 これは、波形を見るとわずかに違っているように見えます。しかしながらリサジューでは位相がずれておらず、位相を変換するような加工は行われていないようです。

 以下は、クレンペラーのモノラル録音をいくつか引っ張り出して同様に調べてみたものです。
Cetra盤 CDE3038
Beethoven:sym.4
 CetraのCDは通常1000番台のものですが、これはリマスターの記載がある3000番台のものです。やはりきれいな直線にはなっていません。
VOX盤 CDX2-5521
Mahler:sym.2
 クレンペラーのVOX時代の録音のCDです。波形を見る限り両チャンネルそろっていますがリサジューでは銀河のような渦巻き状の形になっています。上のCetra盤とは違います。これは位相がずれていることを示していますが、アトランダムにずれているのではなく、一律ずれていることになります(20-30度くらいでしょうか)。
恐らく加工を施してはいないでしょう。再生時に使った機器のチャンネル間で、微妙にずれがあったとか???
Orfeo D'ore盤 C233901A
Beethoven:sym.3
 Orfeoもいくつか貴重な音源をリリースしてくれていますが、これは63年ウィーン交響楽団とのエロイカの盤です。リサジューはきれいな直線を描いています。


 以上はあくまで波形のみを比べたものですから、これが録音の良悪しの材料に使えるわけではありません。
 聞いていて気持ちが悪くなるほど加工してあるものは論外ではありますけれど、真正モノラルのみが聞くに値するというのは極論でしょう。まず、耳を信用することです。機械の性能は人間の耳ほど良くはありません。
2004.11