先に作ったプリ/ヘッドフォンアンプと対になるパワーアンプを作ってみました。 回路は、プリアンプと同様。基本的には出力段にパワートランジスタが付くだけです。定数とパーツは手持ちの部品にあわせて若干変更。2SK30A-2SA1360-2SC3421-終段は2SC3182Nです。


 使用したトランスは海外の機器でも偶に見かけるTalemaのトロイダル型です。1次側が115Vの仕様なので2次側の電圧が定格より幾分下がります。表示は12Vですが、計算上10.4V位、無負荷ではもう少し高めでしょう。整流後、アイドリング他で90mA程度流したところで測ってみると±14.5V程です。電圧増幅段で2.4V、出力段で1.2Vとエミッタ抵抗分のロスがあり、トランスのレギュレーションによる電圧低下がありますのでせいぜい±10Vが出力に使える電圧と言うことになります。8Ω負荷で最大出力が6Wくらいでしょうか。電源は6Ω負荷でも大丈夫だと思います。

 終段のアイドリングはchあたり25mA位流しました。15分くらいでほぼ安定します(アイドリングも1mA位の変動幅で安定します。)。この時アルミのL字アングルで作った放熱器はほのかに暖かい程度。小口径フルレンジで実際に1時間ほど音出しをしてみてもそれほど熱くなりませんから問題ないでしょう。B級アンプの放熱計算は、最大出力の1/10をA級として計算した熱量以内に収まるはずですから、出力トランジスタ4つで約10W、アルミアングルの熱抵抗を5C/W、トランジスタ内部と絶縁板の熱抵抗をあわせて2C/Wとすると、最大70度の温度上昇となります。実際はそこまでパワーを出すことは稀なのでそれほど熱くはなりません。アクリルケースの天板は単に乗せてあるだけの蓋ですから、稼働時にはこれを開けて使います。

 出力のDCドリフトは非常に安定していて、左右とも±2〜3mV程度でした。この回路のアンプを大小あわせてもうかなりの台数組み立てていますが、安定度はいまひとつ良くありません。もうかなり前、MJ誌上に回路が発表された直後に130W級のアンプを組み立てたときも出力トランジスタを何個も飛ばした末、結局、2段目にカスコード回路を入れた50Wアンプにスケールダウンしてやっと安定したことがありました。また、この回路はスピーカーケーブルによっては発振することがあるので、出力にCRを入れたほうが安心できます。
 今までの経験から言いますと、この回路自体が不安定なのではなく、どうも電圧増幅段2段目とドライバーに使うトランジスタに原因があるような気がします。2段目の2つのトランジスタにかかる電圧はかなりアンバランスで、マイナス側に電流を供給するトランジスタはもう一方のトランジスタの倍程電圧がかかります。電圧増幅段の電圧が高いとこれはかなり過酷な動作になります。2SA606や2SC959(C960)はキャンタイプなので熱には強そうな印象を与えますが、逆に相当の発熱となります。また、ドライバーのトランジスタも熱的に対策をしてやらないと100W以上の出力でアイドリングを多く流すのは難しいでしょう。


 フルレンジで鳴らした後、メインシステムのホーンドライバーで音出ししてみました。ここでの一番の懸案は電源オンオフのポップ音がどの程度かということでしたが、思ったより小さく、使えそうです。現用機はミュートスイッチを別に付けて対策をしていたのですがその必要はないようです。
 


 



2004.2