その2



 モノラルレコード用のイコライザーアンプのその2。
 今まで使っていたRIAA用のイコライザーアンプにモノラル用のカーブの回路を追加してみました。今回は以前作ったオペアンプ仕様イコライザーアンプに採用したColumbia/LP、NAB、Decca、AESの4つのカーブに加え、Old-RCA、Old-Decca、EMIの3つのカーブを選択できるようにしました。Old-DeccaとEMIカーブについては少し説明が必要かと思います。DeccaのモノラルLPは、通常のDeccaカーブ(T/O:500Hz,R/O:3000Hz)が対応すると思われますが、初期の頃は少し違うカーブであったという説もあります(時期的には1952年頃、LXTナンバーの12インチLPで言いますと2600番台の後半あたりか)。Leakのプリアンプの再生カーブを見ますと、DeccaカーブのTurnoverは500Hzよりも下に位置しており、およそ350Hzあたりではないかと思われますので、この定数を使っています。Rolloffは10kHzで-13dB程度にとました。
 EMIの採用していたカーブは判然としませんが(英ColumbiaとHMVが同じなのかどうかも含めて)、ColumbiaかNABカーブというのが一般的でしょう。しかし、初期LPにおいて、トスカニーニなど米RCA-Victorから供給された音源を使った盤がどのカーブを用いてもそれなりに鳴るにもかかわらず、EMI独自の音源は非常に貧弱な音に聞こえます。RCA-Victorのソリッドな音作りに対してEMIのホールトーンを生かした(だから幾分曖昧な)音作りは対極と言っても良いと思います。特にALP1200番台くらいまでのフラット盤は再生がどうにかならないものか、というのが今回EMIカーブを別に設けた理由です。Turnover500HzのNABカーブに対してEMIカーブは750Hzとし、高域は10kHzで-15dBとしています。中低域で多少厚くなる特性です。
 
 
 改造前のアンプがSTEREOでしたので、今回は全てのカーブをSTEREO仕様で組みました。切替スイッチの関係でNFループ内のイコライザー素子配線が長くなったせいか、元々のRIAA特性が不安定になってしまい、結局モノラル専用機になりそうです。ものぐさをしないで、モノラル専用機としてNFループを短くするか、入出力を完全に分けたほうが良かったかもしれません。

 本機の特性です。MC専用ですからゲインは約50dB。1mVのSIN波で測定。RIAA特性は改造前の金田式の特性そのもので、100Hz以下が多少膨らむ形になっています。これはイコライザー素子の定数からも予想できる誤差です。

Hz RIAA 本amp 誤差 LP/Col NAB Decca Old-Decca AES Old-RCA EMI
50 16.95 17.65 0.7 14.32 16.07 12.45 14.44 16.74 18.22 13.10
70 15.28 15.74 0.46 13.55 14.89 11.91 12.81 14.59 16.29 12.65
100 13.09 13.38 0.29 12.28 13.11 10.94 10.75 11.98 14.20 11.95
200 8.22 8.22 0 8.59 8.72 7.71 6.26 6.89 9.23 9.21
300 5.48 5.49 0.01 6.08 6.10 5.39 4.01 4.34 6.24 6.95
500 2.65 2.65 0 3.16 3.13 2.59 1.89 1.95 3.00 3.78
700 1.23 1.21 -0.02 1.58 1.52 1.13 0.89 0.85 1.31 1.81
1k 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
2k -2.59 -2.69 -0.1 -3.62 -3.55 -1.76 -2.34 -1.82 -2.02 -3.45
3k -4.74 -4.93 -0.19 -6.30 -6.28 -3.10 -4.44 -3.52 -3.36 -5.83
5k -8.21 -8.47 -0.26 -10.23 -10.17 -5.58 -7.90 -6.51 -5.89 -9.44
7k -10.82 -11.04 -0.22 -12.97 -12.93 -7.79 -10.49 -8.92 -8.04 -12.04
10k -13.73 -13.79 -0.06 -15.94 -15.79 -10.35 -13.34 -11.69 -10.63 -14.95
20k -19.62 -18.92 0.7 -21.58 -21.17 -15.88 -18.62 -17.15 -15.99 -20.60
 (単位:dB)
2007.1