M.Sさんのページ


コンサート・プログラムから 2



鳥啼く夜に   2001.12.14

Schumann:予言の鳥 「森の情景」より Vogel als Prophet 'Waldszenen'op.82

 小品ながら、一度聴いたら決して忘れられない強い個性を持つ作品。晩年、精神のバランスを崩してしまうシューマンの心の危うさがすでに現れている気がしてなりません。
Mozart:ソナタ イ長調 K.331
 I Andante grazioso
 II Menuett
 III Allegretto(Alla turca)

 第3楽章に有名な「トルコ行進曲」を持つ、明るく軽快なソナタ。特に、次々と色彩を変える変奏曲形式の第1楽章は、弾く度に宝石箱を開けたような気持ちになります。
Brahms:主題と変奏 ニ短調
 原曲は弦楽六重奏曲。ブラームスが敬愛し続けたクララ・シューマン(シューマンの妻)の為にピアノ独奏用に編曲しました。心の内を切々と訴えかけてくるようなメロディが印象的です。
Mompou:哀しい鳥 「内密な印象」より Pajaro triste 'Impresiones Intimas'

 スペインの作曲家モンポウの詩のような小品。
武満 徹:リタニ Litany
 I Adagio
 II Lento misterioso
 リタニとは「連祷」の意味。友人の死を悼んで作曲された。深い悲しみに沈む第1曲。浄化されたような透明感をもつ第2曲との対比がとても美しいと思います。
Ravel:親指小僧 「マ・メール・ロワ」より Petit Poucet 'Ma mère l'Oye'

 
同名のペローの童話の一場面を曲にしたもの。物語はグリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」にそっくりで、親にすてられた親指小僧と兄達が森の中をさまよっています。道しるべにまいたパンを食べてしまった鳥達の声がかすかに聞こえてきて・・・。
Ravel:鏡 Miroirs
 I 夜蛾 Noctuelles
 II 哀しい鳥 Oiseaux tristes
 III 洋上の小舟 Une barque sur l'Ocean
 IV 道化師の朝の歌 Alborada del gracioso
 V 鐘の谷 La vallèe des cloches
 全5曲からなるこの作品は、どれも凝った細工物のように繊細な響きに満ちています。これは心の内の鏡に映った幻の風景なのでしょうか。「夜蛾」は不気味な羽音と一瞬の静けさが絶妙に組み合わされ、怪しくグロテスクな世界をつくっています。「哀しい鳥」は、鳥の声に混じって鬱蒼とした森の香りまでもが感じられそうです。「洋上の小舟」は海そのものを表現した作品。波のうねりに巻き込まれ、聴いているだけで、船酔いに似た気分になります。「道化師の朝の歌」はスペインの伊達男が、恋人の窓辺で唄う朝のセレナード。民族楽器や人の声、踊りのステップとあふれるような色彩を感じさせる作品。「鐘の谷」は深い谷底からいくつもの違った鐘の音が聞こえてきます。音は溶け合って豊かに響き、また静寂へとすいこまれていくのですが、私にはこの鐘の音が、暗い水底から響いてくるような気がしてなりません。


幻想画廊
   2002.12.13

Ravel:亡き王女のためのパヴァーヌ Pavane pour une infante defunte

 パヴァーヌはスペイン起源の宮廷舞踏で、日本語で書くと孔雀舞となります。まさに孔雀が美しく羽をひろげたような優雅な作品です。
Ravel:夜のガスパール Gaspard de la nuit
 I オンディーヌ Ondine
 II 絞首台 Le gibet
 III スカルボ Scarbo

 34歳の若さで亡くなったフランスの詩人、ベルトランが残した唯一の詩集「夜のガスパール」は、不気味な美しさを持ち、シュールレアリズムの先駆的作品とも言われて、多くの芸術家に衝撃を与えました。詩集には60以上もの作品がありますが、ラヴェルはそこからとりわけ恐ろしくまた美しい3つを選んでピアノ曲としたのです。
「オンディーヌ」
 人間の男に、自分の夫になって湖底の城で楽しく暮らそうと誘いかける美しい水の精。しかし、男から自分はやがて死ぬ運命にある人間の女の方が好きだと告げられると、突然恐ろしい高笑いとともに、水滴となって消えてしまいます。
「絞首台」
 弔いの鐘が執拗に鳴り続けるなか、絞首台に下げられた死体が赤々と夕日に染められている・・・そんな不気味な光景を音で描いた異色の作品。
「スカルボ」
 夜の闇に棲む小人、スカルボ。その目まぐるしい動きを見事に音楽化した、ラヴェルの代表曲のひとつ。ピアノ演奏のあらゆるテクニックを駆使した超絶技巧の作品。
Mussorgsky:展覧会の絵 Tableaux d'une exposition
 1 プロムナード−こびと Promenade-Gnomus
 2 プロムナード−古城 Promenade-Il vecchio castello
 3 プロムナード−チュイルリーの庭 Promenade-Tuilleries
 4 ビードロ Bydle
 5 プロムナード−卵の殻をつけたひなどりの踊り Promenade-Ballet des poussins dans leurs coques
 6 サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ Samuel Goldenberg und Schmuyle
 7 プロムナード−リモージュの市場 Promenade-Limoges
 8 カタコンブ−死者とともに死者の言葉で Catacombae-Cum mortuis in lingua mortua
 9 バーバ・ヤーガの小屋 Le cabane sur des pattes de poule
 10 キエフの大門 Le grande porte de Kiev
 ムソルグスキーの親友、ガルトマンが31歳の若さで急死した時、建築家でありデザイナーでもあった彼の才能を惜しんだ友人達が、遺作展をひらきました。その展覧会を観たムソルグスキーが、絵の印象をもとに、友への追悼の気持ちで書きあげたのがこの「展覧会の絵」で、当初は「ガルトマン」というタイトルを考えていたといいます。
 プロムナード(ムソルグスキー自身をあらわす)をはさんで演奏される10の小品は、どれもいきいきと、強い個性を持って、まさに音で視る絵画のようです。
 「こびと」は地に棲む妖精。「古城」は中世の城の前で物悲しく歌う吟遊詩人。「チュイルリーの庭」は、子供のけんかの様子。「ビードロ」は重い荷車を引く牛。または虐げられた農民の苦しみでしょうか。「卵のからをつけたひよこの踊り」は、バレエの衣装のデザイン画から生まれました。「サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ」は、ユダヤ人を描いた2枚の肖像画を、ムソルグスキーが音楽の中で対話させたもの。「リモージュ」は市場でのにぎやかな女達の様子。「カタコンブ」はパリの地下墓地の不気味な静けさを描き、「バーバ・ヤガーの小屋」では、ロシア民話に欠かせない魔法使いのお婆さんが飛びまわります。そして最後の「キエフの大門」は、設計図のみで実現しなかった巨大な門の建築を、ムソルグスキーが友情こめて音楽のなか完成させたものです。

Mussorgsky:涙
Burgmuller:なぐさめ