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コンサート・プログラムから



春風のプレリュード    94.4.22

Mozart:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.330

 近年の研究で1781-83年に作曲されたとする説が有力である。「かつてモーツァルトが書いた最も愛らしいもののひとつ」と評された喜びに満ちて美しい作品。第1楽章はきびきびとした軽快な第一主題にはじまり全体を通してあくまでも自然な率直さで統一されている。第二楽章はおだやかに澄んだ明るさの中に流れ、第三楽章は生命が弾むような第一主題と簡潔な展開部とのコントラストが楽しい。
Brahms:主題と変奏 ニ短調
 1860年に作曲された。弦楽六重奏曲第一番(作品18)の第二楽章のみをピアノ用にアレンジした作品。敬愛するクララ・シューマンに捧げられている。ジャンヌ・モロー主演の映画「恋人たち」で、原曲の弦楽六重奏曲がとても効果的に使われており、メロディーをご存じの方も多いだろう。実は私も映画によってこの曲に出会ったひとりである。
Chopin:プレリュード op.28
 バッハの有名な「平均律クラヴィア曲集」全2巻は前奏曲とフーガを組み合わせた24曲ずつの構成になっている。ショパンが24曲の小品を集め「前奏曲」としたのは、あきらかにバッハを意識してのことであろう。本来それに続く曲があるはずの前奏曲のみを集めた構成はとてもユニークだ。どの作品も短いが強い個性を持ち、言葉を選びぬいた詩を思わせる。さらに24曲はバラバラなのではなく、見事にまとまった大きな作品ととらえてよいだろう。ショパンの魅力が余すところなくあらわれた作品である。1836年から39年にかけて作曲。

使用ピアノ ヤマハCF III S

北欧のしらべ Grieg   95.12.17

Grieg:組曲「ホルベアの時代から」op.40
 1.プレリュード
 2.サラバンド
 3.ガボット
 4.アリア
 5.リゴードン
 ホルベアとは、グリーグと同じノルウェーのベルゲンに生まれた文学者、ルドヴィ=ホルベア男爵(1684-1754)のことです。当時のノルウェーはデンマークと同君連合国であったので、ホルベアは主にコペンハーゲンで活躍し、「デンマークのモリエール」と言われ、今日でもノルウェー、デンマーク双方の人々から敬愛されています。この組曲は、グリーグ41才の1884年、ホルベア生誕200年の記念祭のため作曲されました。ホルベアが生きた時代、それ以前の時代も含めたバロック音楽の作品様式を借りて作られた、5楽章の組曲です。
Grieg:「抒情小曲集」より
 1.北欧のうた op.38-2
 2.ハリング op.47-4
 3.北欧のうた op.12-5
 4.蝶々 op.43-1
 5.小鳥 op.43-4
 6.むかしむかし op.71-1
 7.スケルツォ op.54-5
 8.ノクターン op.54-4
 9.小人の行進 op.54-3
 数あるグリーグのピアノ音楽のなかで、その代表作といえる抒情小曲集は、実に10集、全66曲に及んでいます。第1集が21才の時、第10集が死の6年前の作品ですから、生涯の折りにふれ、長期にわたって生み出された作品群と言え、いかにグリーグがこの小品形式を愛したかがうかがえます。1曲はどれも数分で演奏できるものですが、それだけに内容は凝縮され、豊かなイメージを感じさせます。
 今日演奏する9曲は、とりわけ私の大好きな作品ですが、ノルウェーの民族色が濃いものを中心に選んでみました。
Grieg:「ペール=ギュント組曲」より
 1.アニトラの踊り op.46-3
 2.ソルヴェイグの歌 op.55-4
 「ペール・ギュント」というと、私は小学校の古ぼけた木造校舎を思い出します。そして記憶の底からかすかに聴こえてくる「朝」のメロディー。音楽の時間に鑑賞したのか、朝の校内放送のBGMだったのでしょうか。
 イプセンの詩劇に作曲された、全26曲から成るこの長大な劇音楽は、後にグリーグ自身が他の作曲家によって、オーケストラだけの版やピアノ用に、さまざまな編曲が試みられました。
 強はグリーグが2集、全8曲のピアノ用編曲版としてまとめた譜を使い、アラビア風のメロディーが面白い「アニトラの踊り」と、哀切な「ソルヴェイグの歌」をお聴かせします。
Grieg:ピアノ・ソナタ ホ短調 op.7
 第1楽章 Allegro moderato
 第2楽章 Andante molto
 第3楽章 Alla Menuetto, ma poco piu lento
 第4楽章 Finale: Molto allegro
 グリーグはピアニストであった母から最初にピアノの手ほどきを受けました。幼い頃彼がとりわけ好んだのはショパンで、小品形式のなかに細やかな詩情をちりばめた作風にひかれたようです。それは長じて作曲家となってからも変わらず、おびただしい数のピアノ作品のなかで構成感の勝った大曲は、20代前半に相前後して書かれた有名なピアノ協奏曲とこのソナタ1曲ずつにとどまっています。当時のグリーグは、ドイツ音楽の亜流ではない真の北欧音楽の創造を目指す決心をした頃でした。この作品は、ソナタという伝統的な形式を守ったためか、さほど強い民族色は出ていませんが、個性的なリズムに、そして2楽章の民族風のメロディーにそれを聴きとれるでしょう。あふれるような若い情熱を感じる美しい作品です。

雪あかりの道   98.12.26

Palmgren:粉雪 op.57-2
Mendelssohn:無言歌集より
 op.19-5
 op.30-6
 op.30-5
 op.53-3
 フィンランドの作曲家、パルムグレンのこの曲はわずか3分程度の小品ですが、天から降る幾千万の雪片が目にうかぶような、切ないほど美しい作品です。
 メンデルスゾーンの無言歌集といえば「狩り」や「春の歌」ばかりが有名ですが、実際には50曲あまりの作品が収められています。一曲はどれも短く、そのほとんどが無題ですが、まるで詩集を読んでいるように、豊かなイメージにあふれています。作品19-5は激しく揺れ動く感情表現が魅力的。作品30-6「ヴェニスの舟歌」の哀切なメロディーはご存じの方も多いでしょう。作品30-5は、どこか童話の「かえるの歌」に似ていて、弾くたびに楽しくなってしまいます。作品53-3は最も好きな作品のひとつ。何かを訴えかけてくるような、暗い情熱に満ちた作品です。
Beethoven:ピアノ・ソナタ op.28 ”田園”
 第1楽章 Allegro
 第2楽章 Andante
 第3楽章 Scherzo: Allegro vivace
 第4楽章 Rondo: Allegro ma non troppo
 ベートーヴェンは自然をこよなく愛する人でした。このソナタを「田園」と名付けたのは別の人ですが、4つの楽章を通して流れる素朴な美しさを形容するのにぴったりの題と言えましょう。しかし、この作品が書かれた1801年当時、30才のベートーヴェンは人生最大ともいえる苦悩の時を過ごしていました。耳の病がいよいよ悪化し、将来に強い不安を抱いていた頃であり、最愛の恋人に去られ深い恋の痛手を負った年でもあったのです。その暗い心の嵐は、たとえば同年に作曲された「月光ソナタ」にありありと聴きとることができます。しかし、この作品28のソナタは、あまりにも穏やかな幸福感に満ちていて不思議なほどです。郊外を歩きまわることを何より好んだ彼は、絶望の底にあっても豊かな自然に癒され、生きる力を得ていったのでしょうか。ひろびろとした気持ちになれる1楽章。ベートーヴェン自身も特に気に入っていた2楽章。冗談のような3楽章。村まつりのダンスを思わせる4楽章と、どれも心が満ち足りてくるような作品です。
Ravel:ソナチネ
 第1楽章 Modéré
 第2楽章 Mouvt de Menuet
 第3楽章 Animé
Ravel:クープランの墓
 1.プレリュード
 2.フーガ
 3.フォルラーヌ
 4.リゴドン
 5.メヌエット
 6.トッカータ
 ドビュッシーとならんでフランス近代音楽を代表する作曲家であるラヴェル。彼の精緻な音楽に私がすっかり心をうばわれてしまったのは大学1年の頃でした。なかでもこれらの作品は様々の思い出と共に私にとって宝物のような曲です。
 ソナチネとは「小さなソナタ」を意味しますが、繊細な響きで組み立てられた1楽章。物哀しいメヌエットの2楽章。そしてそれらの主題を手品のように組み入れた風のような3楽章と、古典的で均整のとれた形式をもっています。「クープランの墓」は、クープランに代表される18世紀フランス音楽の様式を使って書かれたもので、クープランに対するオマージュであると同時に、個々の曲は、第1次世界大戦で亡くなった友人達に捧げられており二重に「墓」(記念碑)の意味を持つ作品です。クラヴサン音楽を思わせる、軽やかで機知に富んだプレリュード、たった4つの音でテーマを展開してゆく、からくりのようなフーガ、不協和音が絶妙なフォルラーヌ。中間部がどことなくエキゾチックなリゴドン。甘やかなメヌエット。そして華やかなトッカータとどれも魅力にあふれた組曲です。

      

雨の樹  RAIN TREE  2000.12.23
  
Chopin:ノクターン 嬰ハ短調 遺作
   Nocturne cis-moll opus post
Chopin:バラード第3番 op.47
   Ballade Nr.3 op.47

*ノクターン
吐息のような前奏部分と、それに続く哀切なメロディーがとても美しい。
*バラード
全4曲あるバラードの中でも優雅な品格を感じさせる名曲。

Ravel:ソナチネ  
Sonatine
 第1楽章 Modéré
 第2楽章 Mouvt de Menuet
 第3楽章 Animé


Ravel:水の戯れ  
Jeux d'eau

*ソナチネ
18世紀の典雅なクラヴサン音楽を思わせる第1楽章。宮廷舞曲のような第2楽章は特に美しい。風のように駆けぬける第3楽章には第1第2楽章のモチーフが巧妙に組み込まれている。
*水の戯れ
いきいきと湧き出す水が風や光と戯れる様子を繊細に描写している。

武満 徹:雨の樹・素描  
Rain Tree Sketch

大江健三郎の小説に出てくる「雨の木」にインスピレーションをうけて作曲された。葉のくぼみに雫をため雨があがってもその木の下にはずっと静かに雨が降り続けるという木のイメージ。

Sibelius:カプリス op.24-3  
Caprice op.24 Nr.3

小品ながら次々と変化する曲想に万華鏡をのぞいているような気分になる一曲。

Melartin:悲しみの園 op.52  
Der Traurige Garten op.52
 
1 われら二人 Wir zwei
 2 愛の小径 Liebesallee
 3 乞食の子の子守歌 Wiegenlied eines Battlerkindes
 4 雨 Regen
 5 孤独 Soliyude

フィンランドの作曲家。この曲はシベリウスに捧げられている。北欧の自然そのものを感じさせるメロディーを持ちながらどこか世紀末的、または神秘主義的な響きに満ちた不思議な作品。

Liszt:イゾルデの愛の死
  Isoldens Liebestod

ワーグナーのオペラ「トリスタンとイゾルデ」の最後に歌われるアリアをピアノ独奏用に編曲したもの。リストらしく華やかな技巧をこらした一曲になっている。