J.Strauss:アンネン・ポルカop.117/トリッチ・トラッチ・ポルカop.214/ワルツ「ウィーンの森の物語」op.325/ワルツ「芸術家の生活」op.316/ワルツ「酒・女・歌」op.333/皇帝円舞曲op.437/常動曲op.257/喜歌劇「こうもり」〜序曲/喜歌劇「ジプシー男爵」〜序曲

J.ホーレンシュタイン/ウィーン国立歌劇場o.
62.11.24  Viena  (Reader's Digest) Stereo
Chesky
CD 70
J.Straussのワルツを聴く楽しみというのがある。ボスコフスキーのご当地演奏もよいけれど、一見ワルツなどあまり関係のないような指揮者(本当はすごく関係のある人もいる)の演奏も面白い。個人的には、誰の演奏でも面白く聴けるので嫌いな演奏というのはない。ニューイヤー・コンサートを指揮したものであれ、セルやケンペ、クナッパーツブッシュ、ライナー、クレンペラー、アーノンクール・・・などそれぞれちょっと毛色の違う演奏、はたまた、ピアノ連弾や新ウィーン楽派編曲もの、どれもそれぞれ楽しい。年をとったせいか、BrucknerやMahlerなどの重い曲を聴いていると、こうした何のこだわりもない音楽を聴きたくなることがある(息抜きということではなく、純粋に楽しめるという意味で)。
本当のウィーン風ワルツのリズム、というのは日本人の私には解らないけれど、こうしたものは体に染みついたリズムと歌い廻しであって、耳から入ってくる音だけの世界ではないようだ。(拍子にも訛があるわけで、単純に3拍というわけではない。)ホーレンシュタインは、故郷ロシアから13歳の時(1911年)にウィーンへ移住し、6年程暮らしている。オーケストラはウィーン国立歌劇場oとなっているが、この時期の録音ではオーケストラ名の表記に信用がおけないものがいくつもあり、これも≒VPO.ではないかもしれない。それにしてもウィーンのオーケストラであることは間違いないので、本場物ではある。
演奏は、流麗なウィーン風ワルツとはかなり違う。けれどすごく楽しめる。これに比べるとボスコフスキーの演奏は温微的に聞こえる。オーケストラの響きも十分で、ホーレンシュタインのリズム感の良さとコントロールの見事さには感心させられる。例えば1曲目の「こうもり」序曲に聴かれる緩急の鮮やかさと語り口の巧さ。2曲目「常動曲」の乗りの良さ、等々。BrucknerやMahlerなどの大曲の演奏ばかり評価されているけれど、こうした小品(と呼んでいいのかな)の巧さはまた格別で、この指揮者のとびっきりの名盤と言ってもいい。(個人的なことを言えば、ホーレンシュタインの盤の中でこれを聴くことが一番多いと思う。元気が出ます。)


J.Strauss:ポルカ「雷鳴と電光」op.324*/ワルツ「ウィーン気質」op.354/ワルツ「シトロンの花咲くところ」op.364*/ワルツ「春の声」op.410/ワルツ「千一夜物語」op.346*/ワルツ「朝の新聞」op.279*/ワルツ「南国のばら」op.388*/ワルツ「美しく青きドナウ」op.314/入江のワルツop.411*

J.ホーレンシュタイン/ウィーン国立歌劇場o. VSO.*
62.11.24/69.9*  Viena  (Reader's Digest) Stereo
Chesky
CD 95
このCDはVolumeU The Return of Horenstein となっていることから、上記の録音の続編にあたるものだろうが、CDの記録時間が伸びたために、恐らく第1集分の3曲が割り込んだ形になったものと思われる。第1集と同じウィーン国立歌劇場o.との演奏にVSO.との6曲で計9曲。また、Reader's Digestへの録音はディスク化されていないものにLanner、Josef Straussの曲が各1曲あるらしい。ディスコグラフィによれば、これらはともに62.12.2にウィーン国立歌劇場o.と録音されていて、本来何曲か録音してまとまった形で出す予定があったかも知れないが、何かの理由でお蔵入りとなっている。
第1集と同じく素晴らしい演奏。ホーレンシュタインはこれらの曲の録音に喜々として臨んだに違いない。どれもが生き生きしていて、楽しめる演奏。ひょっとしたら、Mahlerあたりで見せる歌い方の原点はこの辺にあるのではないだろうか。