Chesky
CD 70 |
J.Straussのワルツを聴く楽しみというのがある。ボスコフスキーのご当地演奏もよいけれど、一見ワルツなどあまり関係のないような指揮者(本当はすごく関係のある人もいる)の演奏も面白い。個人的には、誰の演奏でも面白く聴けるので嫌いな演奏というのはない。ニューイヤー・コンサートを指揮したものであれ、セルやケンペ、クナッパーツブッシュ、ライナー、クレンペラー、アーノンクール・・・などそれぞれちょっと毛色の違う演奏、はたまた、ピアノ連弾や新ウィーン楽派編曲もの、どれもそれぞれ楽しい。年をとったせいか、BrucknerやMahlerなどの重い曲を聴いていると、こうした何のこだわりもない音楽を聴きたくなることがある(息抜きということではなく、純粋に楽しめるという意味で)。
本当のウィーン風ワルツのリズム、というのは日本人の私には解らないけれど、こうしたものは体に染みついたリズムと歌い廻しであって、耳から入ってくる音だけの世界ではないようだ。(拍子にも訛があるわけで、単純に3拍というわけではない。)ホーレンシュタインは、故郷ロシアから13歳の時(1911年)にウィーンへ移住し、6年程暮らしている。オーケストラはウィーン国立歌劇場oとなっているが、この時期の録音ではオーケストラ名の表記に信用がおけないものがいくつもあり、これも≒VPO.ではないかもしれない。それにしてもウィーンのオーケストラであることは間違いないので、本場物ではある。
演奏は、流麗なウィーン風ワルツとはかなり違う。けれどすごく楽しめる。これに比べるとボスコフスキーの演奏は温微的に聞こえる。オーケストラの響きも十分で、ホーレンシュタインのリズム感の良さとコントロールの見事さには感心させられる。例えば1曲目の「こうもり」序曲に聴かれる緩急の鮮やかさと語り口の巧さ。2曲目「常動曲」の乗りの良さ、等々。BrucknerやMahlerなどの大曲の演奏ばかり評価されているけれど、こうした小品(と呼んでいいのかな)の巧さはまた格別で、この指揮者のとびっきりの名盤と言ってもいい。(個人的なことを言えば、ホーレンシュタインの盤の中でこれを聴くことが一番多いと思う。元気が出ます。) |