Mahler:交響曲第1番ニ長調「巨人」 (1) J.ホーレンシュタイン/VSO. 53 Viena (Vox) Mono (2) J.ホーレンシュタイン/LSO. 69.9.29,30 Barking Assembly Hall, London (Unicorn) Stereo |
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(1) Vox CDX2 5508 ![]() |
![]() けれども、年齢差を別にしてもこのふたりの指揮者は大変似た境遇でした。戦前のPolydor録音からナチからの逃避。戦時中のアメリカ滞在からヨーロッパ復帰。Voxへの録音を経て結局イギリスでの活躍・・・。 ホーレンシュタインの指揮者としての経歴で真っ先に言われるのは、彼の初のコンサート、 年ベルリンでの演目がこの1番だったということでしょう。 ![]() ![]() これは、LSO.という順応性の高いオーケストラを振っていることも寄与していることですが、ホーレンシュタインの解釈にも大きな違いが見られます。純粋に音楽的な見地からだけで説明できるものではないかも知れなませんが、この指揮者の偉大なMahler解釈者としての評価はやはり晩年のものに与えられるべきでしょう。楽譜の音符が十分消化された上で音化されているという意味で、本当に「よくわかる」演奏。 スピーカーで聴くとさほど気になりませんが、ヘッドフォンで聴くとこの録音は状態が良くないことがわかります。強奏で音が割れてしまうのです。ダイナミックレンジがとれないテープでリミッターがかかっていないような録音。強度にリミッターがかかっているものも、急に音量が下がって欲求不満になったりするけれど、鳴りの良いのがホーレンシュタインの特質でもあるのだからこの点は惜しい。
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(2) Unicorn-Kanchana UKCD 2012 ![]() |
Mahler:交響曲第3番ニ短調 J.ホーレンシュタイン/LSO. ワンズワース・スクール少年cho. アンブロジアン・シンガース N.プロクター(A) 70.7.27-29 Fairfield Hall, Craydon (Unicorn) Stereo |
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Unicorn-Kanchana UKCD 2006/7 ![]() |
![]() これは、Mahler自身がこの曲に対し、かなり標題的な発言をしているからです(この曲に限ったことではないが)。それによると、I パンが目覚める、夏が進んでくる(March)、II 牧場の花が私に言うこと、III 森の動物が私に言うこと、IV 夜が私に言うこと、V 朝の鐘が私に言うこと、VI 愛が私に言うこと。加えて当初構想された7楽章構成では、VII 子供が私に言うこと、となっています。この第7楽章は、次の4番の第4楽章に転用されました。 Mahlerの交響曲の流れで言うと、「少年の魔法の角笛」に関連した3曲の中で、劇的要素を取り入れた第2番から次の4番への繋ぎのような役割を果たしています。全体は、どちらかというと深刻をあまり感じさせない曲調ではありますが、盛り込まれている素材はかなり雑多で前後の交響曲との関連から言ってもとりとめがない印象を受けることが、あまり人気のでない理由かも知れません。ただ、こうしたアンバランスとも言える構成とソプラノ独唱、合唱を部分的に取り入れた大きな編成にも関わらず、個々の楽章の完成度は高いと言えるでしょう。 ![]() LSO.の、どんな指揮者にでも反応できるフレキシビリティと技術の高さは、PO.と並んで様々な指揮者とのレコーディングを残していることでも知れます。ただ、このオーケストラは、VPO.やドレスデン・シュターツカペレ、ACO.などのような自身のカラーなり語法を持たない代わりに、指揮者の技量に比例した演奏をするので、名演もあれば凡演もあります。そういう点で言えば、ホーレンシュタインのような指揮者にとっては最もやりやすい相手だったのでしょう。確かに録音も含めて、この演奏はホーレンシュタインの力量をもれなく伝えていると言っても良いと思います。ゆったりとしたテンポと精緻な音の構成、息の長い叙情性と迫真のトゥッティ、これらの絶妙なバランスは、他のどんな指揮者からも聴けないこの指揮者晩年の特徴でした。 録音は、トゥッティでも音がしっかりしているし、音もクリアに捉えられていて、状態の良くない盤の多いこの指揮者の数少ない高音質録音。 ![]() |
Mahler:交響曲第4番ト長調 J.ホーレンシュタイン/LPO. M.プライス(S) 70 (EMI) Stereo ![]() |
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EMI CDM2 53841 2 To AA5054(LP) ![]() |
![]() ホーレンシュタインのMahlerは正規盤でも音があまり芳しくないUnicorn盤や古いVox盤しかないので、こうしたメジャーレーベルの整った録音を聴くとほっとします。コンサートでの隣の雑音と同じように、少なくとも音楽に集中できるだけ気が楽です。と言ってもこの指揮者の場合、その数は非常に少ないのですが。 ![]() この曲は明るい内容、天国的な内容を持っていると言われますが、私にはどうもそう聞こえる演奏はあまりありません。しかし、この演奏は、スタジオ録音と言うこともあるのでしょうが非常に落ち着いた、清楚と言ってもいいくらい整った美しい演奏です。ホーレンシュタインの一連の演奏を聴いてみると、60年代以降のものはどれも強力にオーケストラをドライヴする力感が音楽性と非常に良いバランスをとって、まさに巨匠といった言葉が当てはまる感動的な演奏ですが、60年代終わりから死の直前までのものには、緩徐楽章の美しさと繊細な気配りが特に印象的です。この演奏もそうしたうちのひとつ。 独唱のM.プライスは軽めの明るい声で、「天国」を歌うにはよく似合っています。(付け加えるとこの人のSchumann「女の愛と生涯」が良かった) |
Mahler:交響曲第6番イ短調「悲劇的」 J.ホーレンシュタイン/ストックホルムpo. 66.4.15,17 Concert Hall, Stockholm (Unicorn) Stereo 〜リハーサル(第2楽章F56:1-157小節) 66.4.14 Concert Hall, Stockholm |
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Unocorn-Kanchana UKCD2024/5 M&A CD-785
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![]() ここでのストックホルムpo.の演奏はあまり上手とは言えません。ホーレンシュタインにしては弛緩している部分があるような気がします。これは多分にオーケストラのせいもあって、特に金管群の反応が機敏ではありませんからこの指揮者に特有のリズミックな部分と旋律的な部分の対比が不明確でメリハリに欠けるようです。 M&A盤はUnicorn盤とあまり変わらないくらい良い音です。ただ、この4枚組に収録されているもう2曲の大曲、LSO.とのBruckner8番は、BBC Musicの音の良い盤が出たので必要はなくなりましたし、もう1曲のアメリカso.とのMahler9番は音が貧弱で物足りないので、手に入れる価値はあまりないと思います。 なお、この録音はUnicorn、M&Aともに4月15日,17日となっていますが、Barker氏のDisco.では、スウェーデン放送のアーカイヴには17日の演奏しかないそうです。また、下記リハーサルについてもBIS盤には4月14日となっていますが、Barker氏によれば4月15日,17日。 ![]() リハーサル部分は、第2楽章のスケルツォの一部で、オーボエ他木管で奏されるトリオ部分冒頭。ここでホーレンシュタインは、管だけでなく、弦楽器にスピカート、スタカート、マルカートといった言葉で、跳ねるような明快なリズムを求めています。しかし決して重くならないように、軽く、Mozartのディヴェルティメントのように演奏するよう指示を与えています。この部分の練習後楽員を誉めていますが、やはり要求しているようには上手くいっていないのは、このオーケストラの実力のせいでしょうか。リズムの切れが悪く、鈍重な印象で、洗練された演奏というのではありません。 |
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〜リハーサル BIS CD-421/424 ![]() |