Berlioz:幻想交響曲op.14

J.ホーレンシュタイン/ベルリンRso.
63.9.25L Berlin Stereo
Arkadia
CDGI 744.1
全体にテンポが遅い。いかにもドイツ的といった極めて質実剛健な演奏で、Berliozのおどろおどろしい世界とはあまり縁のない音符どおりの演奏。
 曲想からいえば、普段のホーレンシュタインの強烈なドライヴ感と息の長い波打つようなメロディラインが聴けるのではないかと期待していたのですが、結果は正反対。完全にオーケストラ側の演奏手法です。演奏自体の良し悪しは別として、これがホーレンシュタインであることが信じられないくらい普通にまとまった演奏。ディスコグラフィによると、ベルリンRso.とは当日、同じBerliozの「レリオ」を演奏しています。ということは、この日の演目はBerliozだけということになります。戦後、Voxとの録音以外はほとんどドイツに足を向けなかったホーレンシュタインが、ベルリンでわざわざBerliozだけの演奏会を開くとはどういうことだったのでしょうか。

63年としては驚くほど良い録音です。非正規録音のこの時期のものは普通Stereoで残っているものは少なく、頭の中で補完するにしてもそれも困難な録音が多いのですが、これは実に自然なしっかりとした音で収録されています。会場の雑音が一切ないので、放送用のスタジオ録音ではないかと思いましたが、演奏終了後に拍手が入るところをみるとライヴなのでしょうか。ただ、この拍手はまるでとってつけたように少しの間をおいて収録されており、違和感があります。言ってみれば、スタジオ録音に強引に拍手をつけたような印象を受けます。
 ホーレンシュタインの録音については、どうもあまり音質を期待しないで聴いているせいか、予想を裏切るような音質であると戸惑ってしまいます。こちらの勝手な詮索でしょうが、この演奏はあまりにこの指揮者らしくないものです。