Bartók:ヴァイオリン協奏曲第2番

I.ギトリス(vn) J.ホーレンシュタイン/VSO.
55  (Vox) Mono
Vox
CDX2 5505
弦・打・チェレスタのための音楽や弦楽四重奏曲5番等とともにBartókの最も充実した時期の傑作。完璧にBartók的であり様々な音が美しい均衡を保っています。この作曲家をとりまく状況と反比例して音楽は純化していき、管弦楽のための協奏曲やピアノ協奏曲3番、ヴィオラ協奏曲などの明晰で無駄のない最後の傑作に結晶しました。

ギトリスは、このCDのなかの他の有名曲、Tchaikovsky, Bruch, Sibelius, Mendelssohnも勿論立派な演奏をしているけれど、真摯な直線的な響き(決して一本調子と言う意味ではない)はBartókに一番相性がいいと思います。例えばBruchやMendelssohnでは少し神経質な高域と細めに感じられるシャープな音質が曲を息苦しくするところがあります。勿論、緊張感のある素晴らしい演奏であることは違いないのですが、こうした特性はBartokではぴっくりするほど適合しています。1,3楽章の冴えた技巧といい中間楽章(Andante Tranquillo 静かに、歩く速さで)の叙情性といい、これ以上求められないくらい。
 また、収録された他の曲に感じられる性急なテンポ(超絶技巧のゆえか?)もここでは適正なテンポに感じられます。ホーレンシュタインの伴奏も的確。オーケストラとヴァイオリンのバランスが良く、適度な温度感を持ったBartók特有の音空間を作っているのがすばらしい。

ついでに無伴奏ヴァイオリン・ソナタの演奏について。ここでもギトリスは素晴らしいテクニックをもってこの曲の真価を提示しています。決してメカニックではなく、十分に消化された演奏だと思います。